鯨骨生物群集：8 ページ9
「ああ、もう！ゾムさんもええ加減にしてくださいよ！Aさんのかわええお顔が汚れてまったわｧ…、どないしよ、女性用の服なんて、俺持ってへんよ…」
独り言の随分多い兄である。
「ちょ、ええ⁉︎君、い、妹⁉︎そんなに顔汚して…ええ、どーしよ。な、泣かんといて⁉︎」
ファーストコンタクト。うるせぇにいちゃんだと思った。泣いてるAよりもテンパっているし、何より女性の扱いが壊滅的だった。
「えと、え、エーミールです。Aさんのお兄ちゃん、やでぇ…？あちょ、泣かんといて⁉︎もうほんま、覚えとけよゾムさぁん‼︎」
あたふたしながらもAを必死にあやすエーミールは随分優しい兄なようで、Aは更に涙腺を緩めた。生まれてからいきなりひどい環境にぶち込まれて、周りはヤバい奴らのオンパレード。エーミールとその他の歴然とした差にAは泣き喚いた。
「ええ、と。エーミールです。ここでは7番目に根を生やしました。食べたのは…ふふ、肝臓、ですね。な、泣き止んだ…？よかっ、よかったぁぁあ！服！服、か、シャツと簡単な短いズボンくらいしか…。そ、それでええか！ちょっとだけ待っといて！」
暫くしてから、息を切らしたエーミールに手渡された服。少しオーバーサイズなシャツにサスペンダーの付いた黒いハーフパンツは、今まで身に纏っていたトントンの上着よりも随分服らしい服に感じられた。手際よくAの吐瀉物で汚れた顔と床を綺麗に片付けて身なりを整えてくれるエーミール。
生まれたばかりなのにも関わらず、知識と、無駄に成長した容姿だけを取り揃えた何も知らない無垢なAは、随分、生物にしては不安定なのかもしれない。その不安定さが兄弟を深い感情の淵へ叩き落としているのだから、Aだって、不幸だとしかいいようがないだろう。
「んー、まｱ、とりあえずこんなもんかなｧ。…よ、よかったぁあ、服、見つかって‼︎‼︎」
「え、エーミールさ。あ、ありがとう、ございます！」
「いえいえ、困った時はお互い様ですよぉ！兄弟なんやし、なんかあったら頼って下さい！」
「…A、俺の上着、そろそろ返してくれへんかぁ？」
「あ、えと、う、上着…」
エーミールは顔面蒼白だった。なにしろその上着は、つい先程Aの吐瀉物にまみれたばかりなのだから！
「ｧ？大丈夫やでぇ。ぁ"あ、ええ匂いやんけぇ♡」
「そ、そうですか…」
エーミールは少し引いた。
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雨蛙躑躅(プロフ) - コメント返信のやり方を漸く理解いたしました‼︎返信が遅くなってしまい誠に申し訳ございません🙇♀️コメントをくれた皆様、大好きですぞ〜！！ (4月14日 12時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - 惨事さん» コメントありがとうございます！だんだん全てが覆って、次第に壊れて何もかもが無くなる、かもしれないですね！汚く醜い生態系に存在価値があるのかどうか、雁字搦めになりながら沢山想像して欲しいです！これからも完結目指して頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - かぼちゃピースさん» コメントありがとうございます！この深海で紡がれる不安定な生態系にアナタが雁字搦めにされていたら、作者はとても嬉しいです！これからも頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - まるちゃん生麺さん» コメントありがとうございます！ちゃんと貴方のしきゅ…お腹から生まれている唯一の、おっと。ここまでにしておきましょう！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - リトマス試験紙さん» ありがとうございます！沢山の方々にお気に入り登録や評価、コメントをもらえて雨蛙は本当に幸せです‼︎コメントが届く度に飛び上がって喜んでます！雨蛙の描く悪夢みたいな世界を楽しんでいただけたら、雨蛙はこれ以上ないほど幸せです！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年2月7日 17時
