鯨骨生物群集：31 ページ34
３０分ほど、エーミールは機械を弄ってからゾムとAの元に随分疲れた様子で帰ってきた。ゾムとAがエーミールのお宝(秘蔵)を漁っているのを見て、ふっと優しくエーミールは笑った。正直怒らせてしまうかとAはヒヤヒヤしていたため、エーミールの笑顔に救われた気持ちだった。
「お？おかえり、エーミール。落ち着いた？」
「ええ、もう。ありがとうございました。夢中になってて、ほんま気付かなくて…」
「ええよ。その代わり俺の分の夕飯倍な。」
「それは飯よこせ宣言ですかね…？」
「いやだなぁ、そんな人聞き悪いっすよ」
軽口を叩き合う2人の様子に気の置けた仲なのだろうとAは思う。不思議な美しさの漂うエーミールの部屋は、不思議なくらいAの心を和ませた。エーミールの部屋から出た後も、あの時見た世界の感覚に沈みかけるようなふわふわとした心地よさを覚える。
対してゾムは特段変わった様子もなく、いつも通り軽い足取りでスタスタ歩いて行ってしまう。Aとゾムの間の間隔が広くなって、追いつけないなんて思って頃、くるりとゾムが向きを変えてAの方にズンズン歩み寄ってきた。
「あー、やっぱり掛けとったか。まぁわかるわ、Aって無意識か知らんけど他人を受け入れすぎんねんな。依存してまいたくなるのも納得。って、おーい、聞こえとる？まぁだエーミールの世界に浸っとんの？」
美しい世界だった。ずっとずっと優しくて、心地よくて、あれが本当の世界だったらどれほどAは救われただろうか。
「ったく、しゃあないなぁ」
夢のような世界にとうとう全身がどっぷり浸かりかけた頃、ゾムの声に驚くほど急激に意識が現実に引き上げられてしまうのが分かった。背の高いゾムは軽く引くような、哀れみの視線をAに投げかける。それから目の焦点の合ったAを確認すると嬉しそうにぎゅうぎゅう抱きしめた。
「良かったぁ、効いたわ。最近エミさんも勉強頑張っとるから溶かせんかと思って焦ったわぁ。んヒヒ、A、ありがとぉは？」
「あ、ありがとうございま？？？？」
「ん、まだフラフラする?」
「？？？？」
「あー、分からんか。そうよなぁ。エミさんしっかり分解しとったしなぁ。俺がエミさんの掛けたまほう溶かしとらんかったらA今頃やばかったかもな。ま、感謝してや？」
ニヤリと笑うゾムに、頭痛に割れそうな頭を抱えることしかAには出来なかった。
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雨蛙躑躅(プロフ) - コメント返信のやり方を漸く理解いたしました‼︎返信が遅くなってしまい誠に申し訳ございません🙇♀️コメントをくれた皆様、大好きですぞ〜！！ (4月14日 12時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - 惨事さん» コメントありがとうございます！だんだん全てが覆って、次第に壊れて何もかもが無くなる、かもしれないですね！汚く醜い生態系に存在価値があるのかどうか、雁字搦めになりながら沢山想像して欲しいです！これからも完結目指して頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - かぼちゃピースさん» コメントありがとうございます！この深海で紡がれる不安定な生態系にアナタが雁字搦めにされていたら、作者はとても嬉しいです！これからも頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - まるちゃん生麺さん» コメントありがとうございます！ちゃんと貴方のしきゅ…お腹から生まれている唯一の、おっと。ここまでにしておきましょう！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - リトマス試験紙さん» ありがとうございます！沢山の方々にお気に入り登録や評価、コメントをもらえて雨蛙は本当に幸せです‼︎コメントが届く度に飛び上がって喜んでます！雨蛙の描く悪夢みたいな世界を楽しんでいただけたら、雨蛙はこれ以上ないほど幸せです！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年2月7日 17時
