鯨骨生物群集：20 ページ22
Aを抱えているコネシマの機嫌は最悪だった。
原因は火を見るよりも明らかである。
(チーノ、としょっぴか…。クッソ、邪魔やな)
弟、名前しか知らない2人の新入りの存在が、コネシマの神経を逆撫でしている。いっそ殺してしまおうか、そんな考えさえ頭の中を蹂躙しはじめた。Aのもとに現れた意志を持った肉袋に過ぎないはずの、コネシマよりもずっと価値の薄い、そんな存在にすぎない奴らの誕生に、Aを、大切な妹を、奪われそうになっているという事実。それは酷く不快で、それでいてコネシマに深い衝撃を与えた。
殺してしまおうか。ぐちゃぐちゃにして、原型も留めないほど痛めつけて、海に撒いて仕舞えばいい。それから、弟の行方に心配そうに、泣きそうになりながら顔を歪めるAを優しく抱きしめて、弟は上手くこの環境に馴染めず死んでしまったなどと、適当にほざいておけばいい。そしたらきっと、優しいAは罪悪感に死んでしまうかもしれない。自分にすらもあんなに優しく笑いかけるAのことだから、弟の死の原因と責任は、全て自分にあるなどと言い出してしまうに違いない。それがわかるから、コネシマは簡単にはチーノとしょっぴを殺すことが出来なかった。
唇を噛んだ。肉が切れて、血の滴る感触が顎を伝わった。
「っ、あ"あ"あ"あ"⁉︎クッソ、クッソ、A、AAAAAAA‼︎助けたる、にいちゃんがその汚い奴らぶっ殺して、Aのこと守ったるでな‼︎」
そういえば、Aの話なんてコネシマ達の前で口にしたこともなかったロボロが、昨晩は酷く錯乱していて、トントンに気絶させられていたっけ。あの時はロボロを、軽蔑するような軽く侮蔑の色の混じった視線で見つめていたコネシマも、今ならその気持ちが分かる。可愛い妹、愛すべきAの前だから冷静を装っているだけであって、実際こんなにも誰かを殺したいと思ったのは生まれて初めてのことに違いなかった。
ああ、痒い。こんなにも霜焼けが痒くて仕方がない。
不快で不快で、きっと、今体を掻きむしったら血だらけになることは間違いない。そしたらAが怖がってしまう。それは出来ない。コネシマ自身が許せない。
「2人は、私の部屋で寝てます。ふふ、兄さんとは、初めまして、だなｧ。んふふ…」
腕の中で震えるAに、自分が気がついていないとでも思っているのか。コネシマは腹から笑った。
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雨蛙躑躅(プロフ) - コメント返信のやり方を漸く理解いたしました‼︎返信が遅くなってしまい誠に申し訳ございません🙇♀️コメントをくれた皆様、大好きですぞ〜！！ (4月14日 12時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - 惨事さん» コメントありがとうございます！だんだん全てが覆って、次第に壊れて何もかもが無くなる、かもしれないですね！汚く醜い生態系に存在価値があるのかどうか、雁字搦めになりながら沢山想像して欲しいです！これからも完結目指して頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - かぼちゃピースさん» コメントありがとうございます！この深海で紡がれる不安定な生態系にアナタが雁字搦めにされていたら、作者はとても嬉しいです！これからも頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - まるちゃん生麺さん» コメントありがとうございます！ちゃんと貴方のしきゅ…お腹から生まれている唯一の、おっと。ここまでにしておきましょう！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - リトマス試験紙さん» ありがとうございます！沢山の方々にお気に入り登録や評価、コメントをもらえて雨蛙は本当に幸せです‼︎コメントが届く度に飛び上がって喜んでます！雨蛙の描く悪夢みたいな世界を楽しんでいただけたら、雨蛙はこれ以上ないほど幸せです！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年2月7日 17時
