鯨骨生物群集：2 ページ3
グニグニとした感覚。巨大な肉布団の上で、アナタは目を覚ました。起きたら真っ裸だったことには非常に驚いた。右も左も分からずに戸惑う貴方を助けてくれた兄弟は、トントンという名前らしい。赤いマフラーにメガネをかけた、背の高い兄ちゃんだった。真っ裸なアナタに上着をかけてやった所を見るに、悪いやつではなさそうに見える。女の子の扱いは、些かへたくそではあったが。
「ん、Aは脳味噌食ったんか。ええやん、俺は肺やで？あんま美味いもんやないからデカくて困ったわｧ」
A、それが貴方の名前らしい。
「俺はトントン、オマエのにいちゃんや。ここじゃ2番目に根っこ生やしとる。まあ気軽にお兄ちゃんとでも呼んでくれてええよ」
トントンから貰った上着は大分大きくて、袖を捲ってもなお、腕周りはだぶだぶしていた。水中に裾が浮かんで正直歩きにくい。
「んー、デカいか。まｧ、しゃあないやろ。ないよりはマシって感じやなぁ」
デカいおかげでスカートのようになっている上着の裾を掴んでトントンの後ろをヨタヨタと付いて歩く。
月にでも来たみたいなふわりとした浮遊感に内臓が気持ち悪かった。
「んー、あ"ｧ、今日もええ香りやｧ♡」
マザー、貴方の死骸の上を楽しげに歩くトントン。足取りは今にもスキップをしだしそうに軽い。正直いってAはこの匂いを『臭い』と思った。肉が腐り落ちていく匂いだった。それでもAは、腐臭に満ちたお水を肺いっぱいに吸い込んでは恍惚に顔を歪めるトントンが、なんだか怖くてたまらなかったので決して臭いとは言わなかった。
生まれたばかりにしては、随分懸命な判断である。
それとも、視界に入った兄弟のなり損ない(恐らくトントンの腰についた水色の剣で叩き斬られた元兄弟)が目に入ったからか。どちらにせよ、貴方の死骸を否定しては、きっとAは生きてはいけないのだろう。
「ｧ？震えとんなぁ、A。どうした？にいちゃんが聞いたるわ。…アー、寒いんやろ！ここ、暗いしなぁ。安心しぃ、中はあったかいで」
恐怖に震えるAを抱き寄せるトントン。
なんだかさっきまでよりずっとずっと体温が下がった気がしたAは、このまま低体温症で死んでしまう気がした。口を開けば、腐り落ちて水に溶ける貴方の死骸が入ってきてしまう気がして、Aは必死に唇を噛み締める。
「あ"ﾊ♡ええ匂いやなぁ♡」
ようやく見つけたAの新しい居場所は、些か腐臭が酷かった。
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雨蛙躑躅(プロフ) - コメント返信のやり方を漸く理解いたしました‼︎返信が遅くなってしまい誠に申し訳ございません🙇♀️コメントをくれた皆様、大好きですぞ〜！！ (4月14日 12時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - 惨事さん» コメントありがとうございます！だんだん全てが覆って、次第に壊れて何もかもが無くなる、かもしれないですね！汚く醜い生態系に存在価値があるのかどうか、雁字搦めになりながら沢山想像して欲しいです！これからも完結目指して頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - かぼちゃピースさん» コメントありがとうございます！この深海で紡がれる不安定な生態系にアナタが雁字搦めにされていたら、作者はとても嬉しいです！これからも頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - まるちゃん生麺さん» コメントありがとうございます！ちゃんと貴方のしきゅ…お腹から生まれている唯一の、おっと。ここまでにしておきましょう！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - リトマス試験紙さん» ありがとうございます！沢山の方々にお気に入り登録や評価、コメントをもらえて雨蛙は本当に幸せです‼︎コメントが届く度に飛び上がって喜んでます！雨蛙の描く悪夢みたいな世界を楽しんでいただけたら、雨蛙はこれ以上ないほど幸せです！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年2月7日 17時
