鯨骨生物群集：18 ページ20
「ご、ちそう様、でしたァ」
「うん、お粗末様でした」
「あの、お兄ちゃん。ご飯、もう少し、欲し、です」
「ん？おかわりかぁ。Aちゃン、今日はいっぱい食べるなぁ。お兄ちゃんうれしーわぁ」
「あの、違くて…。チーノと、しょっぴの。…弟達の分を、欲しいナぁって…！」
「あ"ぁ？…何やて？」
帰ってきたトントンの声が随分と低くて、Aは震えた。フォークを握りしめる力が強まっているのが分かる。ひょいと、突然コネシマの膝上に乗せられてAは軽くパニックになった。後ろから回された腕にぎゅうぎゅう締め付けられて、お腹が締まって気持ち悪かった。弟、それはそんなに言ってはいけない一言だったのだろうか。
「A、俺ら、聞いてへんかってん、トントンとコネシマもびっくりしてまったんよ。ごめんなぁ、怖かったやろ？」
死んだ空気が漂っていたなか、それを和らげるようにウツが優しく切り出した。確かに、自分は生まれた弟の存在、そもそも弟が育っていたという事実すら兄達に伝えていなかったということに気がつく。だんまりなトントンとコネシマから漂う殺気じみた冷気に気がつかないふりをしながら、Aはニッコリ笑って、ウツに弟達について語った。そうしないと、殺されてしまう気さえしたから。
「チーノ、と、しょっぴっていう、双子の子なんです…！チーノは、背が高くて、しょっぴは色が白い子で…チーノ、トントン兄さん、よりも、背が高いかも…なぁ、なんて…！」
「うんうん、そうかぁ。チーノとしょっぴかァ。Aチャン、ええ名前あげたねぇ。いつ生まれたん？昨日？今日の朝？」
「昨日、です…！生まれる前から、に、兄さん達のことはいっぱい話していたので、多分、2人はみんなのこと、知ってる…ンじゃないかなぁ」
「そうかぁ、そりゃええね。はよう、にいちゃんも2人に会いたいわｧ」
会話の温度と、部屋の水温の違いが大きすぎて死んでしまいそうだった。
「あ、の。ご飯って…？」
「ん、ああ。それなぁ…ってシッマ⁉︎」
コネシマがAを抱えたまま立ち上がる。視界が急に高くなって、Aはとても怖かった。足が地につかない不安感がAを襲う。ふと顔を上げれば人1人簡単に殺せてしまいそうなトントンと目が合った。Aを抱えているコネシマも、こんな目をしているのだろうか。
「A、俺と弟達に飯届けよか」
上から降ってきたコネシマの声は、とても冷たかったように思う。
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雨蛙躑躅(プロフ) - コメント返信のやり方を漸く理解いたしました‼︎返信が遅くなってしまい誠に申し訳ございません🙇♀️コメントをくれた皆様、大好きですぞ〜！！ (4月14日 12時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - 惨事さん» コメントありがとうございます！だんだん全てが覆って、次第に壊れて何もかもが無くなる、かもしれないですね！汚く醜い生態系に存在価値があるのかどうか、雁字搦めになりながら沢山想像して欲しいです！これからも完結目指して頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - かぼちゃピースさん» コメントありがとうございます！この深海で紡がれる不安定な生態系にアナタが雁字搦めにされていたら、作者はとても嬉しいです！これからも頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - まるちゃん生麺さん» コメントありがとうございます！ちゃんと貴方のしきゅ…お腹から生まれている唯一の、おっと。ここまでにしておきましょう！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - リトマス試験紙さん» ありがとうございます！沢山の方々にお気に入り登録や評価、コメントをもらえて雨蛙は本当に幸せです‼︎コメントが届く度に飛び上がって喜んでます！雨蛙の描く悪夢みたいな世界を楽しんでいただけたら、雨蛙はこれ以上ないほど幸せです！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年2月7日 17時
