鯨骨生物群集：14 ページ16
「おは、おはよｫ。チーノ、しょっぴ」
マザーの体から切り離されるようにして、ようやく独立した生命といえるようになったAの大切な弟達。生まれたばかりの弟は、Aよりもずっとずっと大きくて、それがなんだか、酷くAは嬉しかった。
「おはようございますぅ！A姉さん！」
「うﾝ、おはよぉ。チーノ」
「姉さん、俺も」
「しょっぴも、おはよｫ」
Aの手が届く高さまで屈むチーノ。ふわふわの水色の髪を優しく撫でると、しょっぴも頭を撫でて欲しそうにAの空いている左手を掴んだ。腐った貴方から生まれたはずの2人は、しっかりと肉が骨にくっついていて、暫く時間が経ったって水には溶けない。歩いたって崩れ落ちないし、何よりとても温かくてとくとく脈打っている。生きている、それだけがAの胸を興奮に打ち震わせていた。
「チーノ、しょっぴ。ﾜ、私は、おねｪちゃン。2人の、お姉ちゃﾝ。8番目に、母さんの脳味噌に、芽吹いたの。2人は9番目。だから、ワたしは、2人のお姉ちゃん。2人は、母さんの子宮に、根を張った、ンだね。素敵、だねｪ」
いつか、トントンやウツ、みんながしてくれたように。
「本当？姉さん、俺、素敵ですかッ⁉︎」
「うん、きっと2人は、いっぱい、ｲ、いっぱい、おおきくなれるよ」
「嬉しいです！姉さん、姉さんの弟になれて、俺ほんまに嬉しいです！」
「お姉ちゃんも、嬉しい、ﾖ」
チーノは元気いっぱいで、しょっぴは少しおとなしい。きっとしょっぴも、自分に心を許してくれたなら今よりずっと元気に笑ってくれるだろう。沢山、沢山、Aが2人に愛を注いで、そうして2人が満ち足りた一生を送ってくれたなら、Aはそれだけで死ねてしまうほどに幸福だ。大切な弟。生まれて初めてAが見つけた、自分が守ってやらないと死んでしまうような、そんな弱くて頼りない存在。
「チーノ、しょっぴ。お部屋、行こｳ、か？2人の部屋は、私の部屋ノ、隣なんだぁ」
手を繋ぐと、2人の手はAの小さな手のひらを包み込んでしまった。骨ぼねしくて、Aの手よりもずっと硬い。しょっぴの柔らかい髪からは、少しキツく、煙草の匂いが漂っている。ウツとコネシマによく似た匂いだとAは頬を緩めた。可愛い弟に知らないことを教えてあげる時間は、今まで生きてきたどんな時間よりも満ち足りていたように感じる。
幸せだ。Aは、そう、何度だっておもった。
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雨蛙躑躅(プロフ) - コメント返信のやり方を漸く理解いたしました‼︎返信が遅くなってしまい誠に申し訳ございません🙇♀️コメントをくれた皆様、大好きですぞ〜！！ (4月14日 12時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - 惨事さん» コメントありがとうございます！だんだん全てが覆って、次第に壊れて何もかもが無くなる、かもしれないですね！汚く醜い生態系に存在価値があるのかどうか、雁字搦めになりながら沢山想像して欲しいです！これからも完結目指して頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - かぼちゃピースさん» コメントありがとうございます！この深海で紡がれる不安定な生態系にアナタが雁字搦めにされていたら、作者はとても嬉しいです！これからも頑張ります！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - まるちゃん生麺さん» コメントありがとうございます！ちゃんと貴方のしきゅ…お腹から生まれている唯一の、おっと。ここまでにしておきましょう！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - リトマス試験紙さん» ありがとうございます！沢山の方々にお気に入り登録や評価、コメントをもらえて雨蛙は本当に幸せです‼︎コメントが届く度に飛び上がって喜んでます！雨蛙の描く悪夢みたいな世界を楽しんでいただけたら、雨蛙はこれ以上ないほど幸せです！ (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年2月7日 17時
