鯨骨生物群集:11 ページ12
「ァア?誰やお前ェ」
「うオ、コネシマ」
「さんをつけろさんをオ!」
ずっしりした、やっぱり背の高い男。赤と黒のシマシマした服を着た、金髪のにいちゃん。
「シマシマ…コネシマ、フッ」
「お前シバくぞぉ我ぇ⁉︎」
「シッマ…、シマシマ…フフッ」
ウツの言った通り、コネシマとはじめましてをしたのは他の兄弟に比べて随分時間が経ってからだった。ウツの言うほど外道な心無いやつ(そこまでは言っていない)ではないように思えたし、そこまで害のある奴には見えない。大丈夫、安心して欲しい。不審者かどうかを見極めるAの両目は、ここに来てから大分鍛えられている。
「おお妹ォ、にいちゃんには『兄さん』か『さん』付けが礼儀や。おん、A、やってみぃ」
「シッマ」
「もうそれでええわ」
随分肝の座った妹だと思う。実際コネシマからしてしまえばAのことなんざ一捻りなのだろうが、それでもなんやかんや笑って許しているのは、コネシマが優しいからなのだろう。怖いにいちゃん、ではなく、気のいいにいちゃん、な訳である。
「あー、まぁ仲良くしてくれや。コネシマや。ここには4番目に根っこ生やしとる。食べたんは…」
Aを腕に抱え上げたまま言い淀むコネシマ。少し躊躇うコネシマは、なんだか急にAの目には小さく見えて、無理して言わなくてもいいだなんて口走りそうになる。それでも聞かなくてはならない。知らなくてはならないと、Aは誰に聞くでもなく知っている。だから無理させる他ない、その口をAの小さな両手が塞ぐことはかなわない。
「…心臓や。心臓。で、お前は?」
「脳味噌」
「あー、そうか。そっか、…そうか。ふは、そりゃええな!Aは賢くなれるなぁ!よかった、よかった…」
コネシマは存外、ウツによく似ていると思う。
小さな存在にも優しいのは、きっとAの存在を否定せずに受け止めるだけの技量がコネシマにあるからなのだろう。
「えら、い。ねぇ、シッマ、兄さ、えらい、ね…」
「…、ほうか」
ペタペタAがコネシマの頭を撫で回せば、びっくりするほど優しくコネシマが笑ったので、釣られてAも笑った。箱庭の中のような、穏やかな時間であったと思う。
「っ、ハッハッ、ア"ーはっはあ"っ、あ"あ"!っ、阿保、阿保やなぁA!こんな俺に、…♡、は、ハッ、ア"ハハハッ、A、A、♡」
見る目がある?節穴の間違いだろうに。
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雨蛙躑躅(プロフ) - コメント返信のやり方を漸く理解いたしました‼︎返信が遅くなってしまい誠に申し訳ございません🙇♀️コメントをくれた皆様、大好きですぞ〜!! (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - 惨事さん» コメントありがとうございます!だんだん全てが覆って、次第に壊れて何もかもが無くなる、かもしれないですね!汚く醜い生態系に存在価値があるのかどうか、雁字搦めになりながら沢山想像して欲しいです!これからも完結目指して頑張ります! (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - かぼちゃピースさん» コメントありがとうございます!この深海で紡がれる不安定な生態系にアナタが雁字搦めにされていたら、作者はとても嬉しいです!これからも頑張ります! (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - まるちゃん生麺さん» コメントありがとうございます!ちゃんと貴方のしきゅ…お腹から生まれている唯一の、おっと。ここまでにしておきましょう! (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - リトマス試験紙さん» ありがとうございます!沢山の方々にお気に入り登録や評価、コメントをもらえて雨蛙は本当に幸せです‼︎コメントが届く度に飛び上がって喜んでます!雨蛙の描く悪夢みたいな世界を楽しんでいただけたら、雨蛙はこれ以上ないほど幸せです! (4月14日 12時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨蛙 | 作成日時:2024年2月7日 17時