まるごと好きです (ページ4)

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呪ってやったの　　in ut ページ4

愛している。故に___

アパートの一室に､なんとも酷たらしい死体が転がっていた。腸がまろび出た腹。腕についた無数の切り痕。身体中には根性焼きがはびこっていて､心臓には包丁が突き立ててある。動かない瞳孔は､確かにAを見据えていた。
「はぁっ、はっ、はぁっ」
血がぺっとりとこべり付いた両手を高揚に震るわせる。やってやった。私を捨てたあの人を､今日ついに殺してやったのだ。
「アハ♡､ハハハハ、ハハハハハハハハハハハ」
狂ったように笑うAを､冷たく鬱が見つめていた。
「貴方が悪いんですよ。私を捨てたから。何度も何度も､裏切ったから。」
まるで鼻でも噛んだティッシュのように､私の事を捨てたから。だから今度は私が、呪ってやったの。

鬱の死体に顔を紅く染めるAは、とても正気の沙汰では無いと見える。これほどまでに狂愛と言う言葉が似合う俺が、彼女の他に居るだろうか。
其処が､ええんやけど。
身体が消えて身軽になった鬱は、自分の死体を愛でるAを､部屋の天上から愛おし気に眺めていた。
Aが自分だけを愛することをずっと前から､鬱は切に願っていた。
その為だったら金や地位､命さえも惜しく無かった。倫理観など邪魔にすら思えた。
だから､浮気したのだ。
自分の大切さをAに分らせる為に。一回浮気してAが自分の大切さに気付いてくれたらそれで充分だったのだけれど、苦痛と不安､その他もろもろの感情に顔をぐちゃぐちゃにして自分に追い縋るAがあまりにも可愛過ぎて､気が付いたら､浮気の回数はいつの間にか両手に収まり切らなくなっていた。別に女の身体や顔には興味など微塵も無い。性処理だって、風俗で事足りる。それでも楽しくも無い浮気を続けていたのは、Aからの愛を感じる為。
「やっぱり、私の顔じゃダメなの…、綺麗だったら、私、」
そんな事あらへんよ。寧ろA以外の人間なんて考えたこともあらへんよ。かわええAそんなに俺の事だけ考えて､めっちゃかわええ。なぁ。A？
結果､嫉妬に狂ったAに惨殺されたけど、終わりよければすべてよし。Aは､一生俺を背負って生きるんや。或は俺の後を追って死んでまうかもなぁ。まぁ、でも其れも愛故やし。ああ､かわええ。早うコッチに来てくれへんかなぁ。

大好きだから、好き過ぎて狂ってしまったから。だからお前を、呪っテヤッタノ。