まるごと好きです (ページ3)

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切符　in rbr ページ3

「どうやった？今生は」
揺れる列車の中、紅色のシートに二人は座っていた。少女の眺める窓枠の向こう側には、足首程の深さの水が、ただ延々と広がっている。
「分かってる癖に」
柿色の甚平に身を包む少年を、少女は力無く睨みつけた。
「逃がすつもりなんて、ない癖に」
雑面の下からやけに楽しそうな少年の顔がのぞいた。無言の肯定とも取れるその表情に、ぬっと背筋を舐め上げられる様な不快感を覚える。
「でもあかんやん。心中なんて、あの男可哀想になァ。ンフ、あんさん。もしかして俺から逃げられるかもしれんとか考えた？」
残念やったね。そう笑う少年がやけに楽しそうで、嬉しそうで。これが長い悪夢なら良かったのになぁと、少女は小さく溜息を零した。
「また生まれ変わる？幸せなんてそこにないのに？なぁ、ずっと俺と居ろうや。そしたらもう殴られることも、腹が減ることもないで。諦めたらええんよ」
優しい乳飲み子をあやすような安心する声。
それにぎゅっと耳を塞ぎ、少女は笑った。
「ロボロが私に呪いをかけたから。私は何度死んでも救われない。分かってる癖に。幸せにするつもりなんて、ない癖に」
あの日、あの夜、あの生で、少女が神社に逃げ込まなければ、少年に、ロボロに気に入られなければ。きっと今頃、少女は次の幸せに溢れた生への切符を手にしていたのだろう。
神隠し。
それは神に気に入られた人間の末路である。

呪ってやったの　　in ut→←吸血鬼は恋ができない　in shp