まるごと好きです (ページ1)

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意味もなく　in kn ページ1

茹だるような暑さが､身を焼いている。何処からとも無く聞こえて来る蝉の声を鬱陶しく思いながら、コネシマはエアコンのスイッチに手を伸ばした。冷房､と書かれた青いボタンを押し込むと、ピっと機械的な音がして､ヒンヤリと冷たい風が流れ込んだ。肌を撫でる冷えた風に心地良さを覚え､風呂上がりの湿っぽい髪をタオルで雑に拭いた。
冷蔵庫で冷えていた麦茶を､意味もなく胃に流し込む。喉が、意味もなく乾いてた。
コネシマの自室には､またこれと言った意味もなく殺したAの死体が転がっている。特に冷房で冷やしたりはしていないから、もうじき腐り出すかもしれない。死体の喉元には、青黒い手形がくっきりと付いている。
絞殺したのだ。
Aの汗か滲んだ首筋を見ていたら、どうにも自分の手で､その気道を潰してやりたくなったのだ。
思いついたから殺した。本当に､ただ、それだけ。他意は無い､その筈だ。
自分の手の届かない所に行こうとしたAが憎かった訳では無い。俺以外を愛そうとしたAが恨めしかった訳では無い。ただ、幸せそうに笑ったAに､どうしようもない殺意を抱いた。それだけの筈なのだ。
愛していたなんて、好いていたなんて、そんな筈が無いのだ。
愛だなんて、所詮はフィクションに過ぎないのだから。
あの日､Aにしたキスも、抱きしめたことも、あげたプレゼントやどうしようもない不整脈だって。
意味は無い。愛故では決して無い。
ただ、横たわるAを見つめていたら、どうしようも無い寂しさに襲われて、気が付いたら包丁で自分の腹を刺していた。
掠れゆく意識の中で､これまた意味も無く
「ああ､心中しとけば良かったな」
なんて思ったりして。

意味が無かったのでは無く、自分がただ感情に疎かっただけだと、ただそれだけの事だったのに。

意味も無く、コネシマは死んだ。

・コネシマ

意味のある日々を生きただけのただの人間。
感情がない？そんなわけない。ただの人間なんだから。
意味ある日々が意味のない死を生んだだけ。