鯨骨生物群集：50 ページ6
「なぁAチャン、クッキー美味い？」
口が詰まっているせいで喋られない代わりに、Aはコクリと小さく頷いた。
「へへ、そっか…。じゃあクッキー好きになった？」
それからまた、コクリと小さく頷いた。
「良かった、そっか、そうよな…良かったわ」
温かい笑みを湛えながら、ウツがAの頭をわしゃわしゃと掻き回す。しょっぴが今朝結ってくれた髪型は崩れてしまった。けれど、ウツがすごく嬉しそうに笑うから、なんだか髪型なんかどうでも良くなって、つられてAも笑った。くふくふ笑う度に口から泡が溢れる。
「俺なぁ、ずっっっとAちゃんに好物を作ってやりたかってん！！けど、こんなとこじゃ美味いもんなんか食べれんやんか。だからこのクッキー、Aちゃんに食べて欲しかったんよ〜！！！………………………あとは、仲直りしたかったっちゅうのもお茶会に誘った理由かな。ほら、鯨の死骸に近付くなって言ったやつ…怖かったよな。ほんま、ごめんな。………A、兄ちゃんと仲直りしてくれるか？」
差し出されたウツの右手を、優しくAは両手で包むようにして握った。ぎゅっと、ウツがAの手を握りる。痛いほどに、握りしめる。それからヘラりと笑って、濁ったドブ色の滲む紺の目を見開いてウツは言った。
「優しいなぁ、Aちゃんは。俺のこと許してくれるんや。…でもなぁ、仲直りするのに嘘をついたままなんは良くないと思わへん？」
手が握り潰されるように痛む。骨が軋んで悲鳴を上げていた。
「だからさ、正直になろうと思うんよ。…鯨の死骸、いんや、グルッペンの死骸で何しとったん？チーノとしょっぴ連れて。なぁAちゃん？」
ニヒルな笑みを浮かべて、ウツが言った。優しく頬を撫でられる。
「近づいちゃあかんって言ったよな？なんでグルッペンのとこ行ったん、なんで？」
昨日、グルッペンの死骸の中で微かに光るランプを見て肝を冷やしたことをウツは鮮明に思い出していた。怖かった、Aが離れてはどうしようかと気が気ではなかった。血が堰き止められたのか、Aの手首より上の部分が赤黒く染まり始める。
「ウツ、兄さん。離して、」
手が、勝手にAを手放した。Aがいなくなってしまう、置いて行かれてしまう。A、A、A。必死に手を伸ばそうとするも、体が動かない。それに困惑を隠せないまま、縋るようにウツはAを見つめ続けた。
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雨蛙躑躅(プロフ) - 七瀬。さん» 温かいお言葉をありがとうございます！！色々と多忙な時期でして、時間の合間を縫って書いているような状況ではございますが、最後まで頑張ります！！コメント、本当にありがとうございます！！ (5月4日 8時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬。(プロフ) - すっごくすっごく面白いです！！！！この作品本当に大好きです！！作者さんの作品がどれも大好きです！！これからも頑張ってください！！ (5月2日 5時) (レス) id: 600689a398 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - えー、コメント返信の仕方を漸く理解いたしました！！遅くなって本当に申し訳ございません🙇♀️コメント毎回楽しく読ませてもらっています！！ (4月14日 13時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - ロリコン女さん» コメントありがとうございます！推していただけるだなんてものすごく嬉しいです！この作品は割と世界感や流れを考え抜いてから産んだものなので、そんな風に言っていただけるだなんて、とても嬉しいです！これからもよろしくお願いします！！ (4月14日 13時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
ロリコン女 - とても、とても好きです。文の書き方とか、きちんとキャラに沿って表現されてたりとか、体の機能を力として綴られてたりとかするところがもう、ほんとに、好きです。推します。 (2月25日 23時) (レス) id: a814b6a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年2月23日 21時
