鯨骨生物群集：46 ページ2
しょっぴは、グルッペンの死骸を咀嚼するAに、息が詰まったような、信じられないものを見たような、そんな表情をして目を見開いていた。薄い唇は血の気が引いていて、痛いくらいに握りしめた拳はブルブルと震えている。
「姉さん、っなんで、…なんでコイツの死骸なんか」
「私じゃなくて、母さんが食べたがっていたノ」
「俺は？俺を食べればよかったやないですか」
「グルッペンじゃなきゃ駄目だった」
姉に、愛しいAの体に自分以外の異物が入ることへの不快感。怒りにもとれる、激しい鬱情。愛しい姉はいつだって、しょっぴの気持ちに気が付かない。
お腹が空いたのなら、しょっぴの肉を食えばいい。肉欲に溺れそうならば、しょっぴの体を使えばいい。怒りが収まらないのなら、しょっぴのことを殺せばいい。しょっぴにはそれが許せた。愛しい姉の為ならば、どんなことだって幸福に満ちた行為である筈だから。
それなのに、姉は、Aは一度だってしょっぴにそんなことをしてくれたことがないのだ！
チーノのことは抱き締めたくせに、しょっぴのことは抱き締めなかった！今だってしょっぴを食えばいいのに、とうの昔に死んだ母の男の骸を貪り食っている！
どうして、これに怒らないでいられるというのだろう！
「…っは、姉さ」
姉に提案された父の死骸探検。くだらないとは思いつつも、姉と自分、チーノだけの秘密という甘美な響きに脳の真髄の痺れるような心地よさを感じて、あわよくばチーノよりも自分を見てほしいと一番横で姉を支えたつもりだった。それなのに、姉さんは今、こんな男の死骸を食っているというのか！！
父、グルッペンの死骸をはらわたの煮え繰り返るような思いで踏み締める。やはり、チーノのように姉を家の中だけに留めようと引き留めるべきだったかとしょっぴはキツく唇を噛んだ。
「なんでや！！なんでなん！？！？姉さん、姉さん、姉さん！！！A姉さん、俺でええやろ、なんで、っ俺を食ってくださいよ！！」
Aを地面に押し付けるようにして上に跨った。馬乗りという状況なわけだがそんな可愛い言葉で片付けられるほどしょっぴの気持ちは軽くない。
Aの口の中に自身の右の人差し指と中指を突っ込んで、それからぐちゃぐちゃに歪んだ顔で不器用に見えるほど無理矢理笑ってから、しょっぴは言った。
「姉さ、た、食べてください。俺の指、コイツの肉を食べた時みたいに、噛みちぎって…。食べて、ください。姉さん、」
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雨蛙躑躅(プロフ) - 七瀬。さん» 温かいお言葉をありがとうございます！！色々と多忙な時期でして、時間の合間を縫って書いているような状況ではございますが、最後まで頑張ります！！コメント、本当にありがとうございます！！ (5月4日 8時) (
レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬。(プロフ) - すっごくすっごく面白いです！！！！この作品本当に大好きです！！作者さんの作品がどれも大好きです！！これからも頑張ってください！！ (5月2日 5時) (レス) id: 600689a398 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - えー、コメント返信の仕方を漸く理解いたしました！！遅くなって本当に申し訳ございません🙇♀️コメント毎回楽しく読ませてもらっています！！ (4月14日 13時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙躑躅(プロフ) - ロリコン女さん» コメントありがとうございます！推していただけるだなんてものすごく嬉しいです！この作品は割と世界感や流れを考え抜いてから産んだものなので、そんな風に言っていただけるだなんて、とても嬉しいです！これからもよろしくお願いします！！ (4月14日 13時) (レス) id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
ロリコン女 - とても、とても好きです。文の書き方とか、きちんとキャラに沿って表現されてたりとか、体の機能を力として綴られてたりとかするところがもう、ほんとに、好きです。推します。 (2月25日 23時) (レス) id: a814b6a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨蛙 | 作成日時：2024年2月23日 21時
