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なきむしうきしょくん ページ5

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「ねえ、Aちゃんの前の彼氏ってどんな人?」



自分で自分の傷を抉るばかりだ。




「んー?別に普通の人だよ」

「年上?年下?同い年?」

「三つ年上だったかな。なんで?」

「ふーん……」


不思議そうに首を傾げる君に、僕はただ足元の小石を蹴るだけ。
蹴り飛ばした小さな土のかたまりは、電柱にぶつかってそのまま粉々に砕けた。


10歳年上のおねえさんに恋をするのは不毛なことなのかな。

身長は追い越せても、他は何もかも追い付かない。おとなとこどもの壁は、思ったよりもずっと高い壁だった。


綺麗なダークブラウンの毛先が夏の生ぬるい風に吹かれて揺れる。
黒いレースの日傘の中、パフスリーブの白い二の腕が汗でじんわりと湿っているように見えた。

一歩近付いて、その腕に手を伸ばしかけて、自分の姿を見てやめる。

お洒落なシャツとは程遠い制服姿とスクールバッグ。甘い香水とは掛け離れた制汗剤の匂い。


25歳と15歳。OLと高校生。努力でどうにもならない年の差は、背中に滲む汗のようにじわりじわりと胸の奥を刺激する。



「……浮所くん?」

「………」

「どうしたの…?何で泣いてるの?」

「え……?」


ぽろり、涙がこぼれて焼けたコンクリートに落ちていく。


え、僕、なんで泣いてるんだろう。そう思ったのに涙は止まるどころかぼろぼろと溢れてきて、慌てて拭う手のひらがあっという間にべたべたになってしまった。

困ったように僕を見上げる君の顔を、見ることができない。


「おれ、」

「うん」

「おれ、なんで年下なんだろう。なんで、Aちゃんの三つ年上になれないんだろう」

「浮所くん……」

「すきって気持ちだけじゃどうにもならないのが、くやしいよ……」



君の黒い日傘が、僕ごとすっぽり覆い被さる。

小さな傘の中で汗と混ざる甘い香り。おとなの香水の匂いだ。ドラッグストアで598円の制汗剤の匂いとは、やっぱり全然違う。


「泣かないで、男の子でしょ」

「子じゃないもん。男だもん」

「あはは、かわいいね」


背伸びをした君の長い爪が僕の涙を拭う。

グロスの光るくちびるに触れられるのは、あとどれくらい先なのだろうか。


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設定タグ:那須雄登 , 浮所飛貴 , 東京B少年   
作品ジャンル:恋愛
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りつ(プロフ) - しいさん» ありがとうございます嬉しいです!!幸せな気持ちになって頂けるようちまちまと更新していきます〜! (2017年10月2日 8時) (レス) id: 7c91888883 (このIDを非表示/違反報告)
しい(プロフ) - いつも読ませていただいては幸せな気持ちになってます!!これからの更新も楽しみにしています\(^o^)/ (2017年10月2日 2時) (レス) id: ff1ac2d1a8 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - ふーさん» こちらこそお読み頂きありがとうございます〜!短い話ばかりですが少しでも暇つぶしになれば嬉しいです(*^o^*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 49628bd39a (このIDを非表示/違反報告)
ふー(プロフ) - りつさんのお話がまた読めて本当に本当に嬉しいです!!!!!!!ありがとうございます!! (2017年8月21日 19時) (レス) id: e57a3c666b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りつ | 作成日時:2017年8月21日 19時

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