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浮所くんにプロポーズされる話 ページ37

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10年前、わたしは君にプロポーズされた。


「ねえねえAちゃん、知ってる?おとうさんとおかあさんは、『こんいんとどけ』を書いたからけっこんできたんだよ」

「なぁにそれ。どこで知ったの?」

「きのう、おかあさんが見てたテレビをこっそり見たんだ。こういう紙に、なまえが書いてあって」


解いていたさんすうドリルを放り投げて、きみはクラスだよりの裏紙の上の方に、大胆に「こんいんとどけ」と大きく書いた。

その左下に「おっとになるひと」。
その隣には「つまになるひと」。


意外と細かい所まで見てるのね。一体なんのドラマを見たのだろう。

いま流行りのラブストーリーかな。ついにあの二人が婚姻届を書いたよ!と、ドラマを見ているクラスの女の子たちがきゃっきゃと話していた気がする。


「ほら、Aちゃんも」

「え?わたし?」

「うん。ぼくはもう書いたよ」


小さな手で握っていた鉛筆をはい、と渡される。

「おっとになるひと うきしょひだか」。

小学生らしい歪んだ字が、窮屈そうにそこに並んでいた。



「えー?ひだかくん結婚してくれるの?」

「え!?しないの!?」

「ありがとー。うれしいなぁ」


受け取った鉛筆で何も考えずにすらすらと名前を連ねる。

「つまになるひと」の下に、同じようにひらがなで自分の名前を書いた。


「うふふ。やったぁ。これでぼくたち、けっこんできたね」

「そうだねぇ。ほら、宿題やっちゃいな」

「むー。やりたくない」

「宿題やらない旦那さんはきらーい」

「…やりまーす」



ほったらかしていたさんすうドリルを引き寄せて、飛貴くんはまた数字とにらめっこを始める。


かわいいかわいいご近所の男の子。
仕事で帰りが遅くなりがちの彼の両親に代わって、よくうちに預けられていた小学生だった頃のきみ。


彼が小学一年生、わたしが高校一年生の頃の話だ。



あの「こんいんとどけ」はどこへいったんだろう。

使い終わったさんすうドリルと一緒に捨てられたかな。たぶんそうだろうな。




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設定タグ:那須雄登 , 浮所飛貴 , 東京B少年   
作品ジャンル:恋愛
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りつ(プロフ) - しいさん» ありがとうございます嬉しいです!!幸せな気持ちになって頂けるようちまちまと更新していきます〜! (2017年10月2日 8時) (レス) id: 7c91888883 (このIDを非表示/違反報告)
しい(プロフ) - いつも読ませていただいては幸せな気持ちになってます!!これからの更新も楽しみにしています\(^o^)/ (2017年10月2日 2時) (レス) id: ff1ac2d1a8 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - ふーさん» こちらこそお読み頂きありがとうございます〜!短い話ばかりですが少しでも暇つぶしになれば嬉しいです(*^o^*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 49628bd39a (このIDを非表示/違反報告)
ふー(プロフ) - りつさんのお話がまた読めて本当に本当に嬉しいです!!!!!!!ありがとうございます!! (2017年8月21日 19時) (レス) id: e57a3c666b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りつ | 作成日時:2017年8月21日 19時

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