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「クラスメイトにかわいい女の子いる?」
「いるかもしれないけど、興味ない。俺、Aちゃんにしか興味ないよ」
「いつかは飛貴くんも、私より同級生とか、後輩の女の子とか。そういう子の方が良いなって思う日が来るかもしれないよ」
「……なんで、そういうこと言うの?」
大きなまぶたの奥の瞳はぐらぐらと揺れていた。
不安だった。だって彼女の周りにはスマートで大人な男の人がたくさんいる。
仕事の話なんてこれっぽっちも分からない。
お酒は飲んだこともない。
高いリングをプレゼント出来るような男でもない。
知ってるよ。誕生日にあげた安いネックレスをずっと大切に付けてくれていること。
勉強の邪魔にならないようにあまり頻繁に返信をくれないこと。
好きだ好きだと伝えるたびに、少し困ったみたいに照れくさそうに笑うこと。
「…不安だから。私も」
「Aちゃん……」
「いつか飛貴くんが、私よりずっと若くてかわいい女の子の方にいっちゃうんだろうなって思うと、想像しただけで悲しくなるよ。ばかみたいでしょ?」
震える声にくちづける。
パジャマの隙間から覗く錆びたネックレス。まぶたに滲む涙。舌先で舐め取るそれはしょっぱい。
「不安なんていらない。不安な気持ちにもさせない。後にも先にも俺はAちゃんだけだ」
「……うん」
「もう少しバイト代が貯まったらさ、指輪、買いに行こう?ペアのやつ。まだ時間掛かっちゃうかもしれないけど……」
「ふふ。うん」
「へへ。だから、笑ってね」
うん、と腕の中で君は小さく頷いた。
白くて細い手を取って、左手の薬指の付け根にキス。
早く大人になりたいよ。
いつか高級レストランのディナーもゴールドダイヤのアクセサリーもとびきり素敵な花束も与えられるような大人に。
それまで離れないように、絶対にこの手を強く握ってるからね。
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りつ(プロフ) - しいさん» ありがとうございます嬉しいです!!幸せな気持ちになって頂けるようちまちまと更新していきます〜! (2017年10月2日 8時) (レス) id: 7c91888883 (このIDを非表示/違反報告)
しい(プロフ) - いつも読ませていただいては幸せな気持ちになってます!!これからの更新も楽しみにしています\(^o^)/ (2017年10月2日 2時) (レス) id: ff1ac2d1a8 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - ふーさん» こちらこそお読み頂きありがとうございます〜!短い話ばかりですが少しでも暇つぶしになれば嬉しいです(*^o^*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 49628bd39a (このIDを非表示/違反報告)
ふー(プロフ) - りつさんのお話がまた読めて本当に本当に嬉しいです!!!!!!!ありがとうございます!! (2017年8月21日 19時) (レス) id: e57a3c666b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りつ | 作成日時:2017年8月21日 19時