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「……かわいー!!女の子みたい!」
「も〜…俺はおもちゃじゃないんだからね!」
「待って、最後にグロス塗る〜」
ポーチから取り出したのは、透明なボトルに入ったローズピンクのグロス。
見るからに絶対に僕には似合わなさそうなものを、Aちゃんはためらいなく僕のくちびるに乗せた。
「んーってやって、ぱってして」
「ん〜…ぱっ」
「我ながら自分の才能に惚れ惚れするよ……」
くちびるを擦り合わせてグロスをすりすり。なんだかべたべたして気持ちが悪い。
渡された手鏡の中の自分。
まつげくるん。
ほっぺたピンク。
ぷるぷるのくちびる。
「……って、全然可愛くないじゃん!!ただの俺じゃん!!」
「何言ってんの!!めちゃくちゃかわいいじゃん!!そうだ、わたしのワンピース着る?」
「いやだーー!!」
かわいいかわいい、と言ってくるAちゃんのことがすきだけどきらいだ。
だって俺も男だもん。かわいいより、かっこいいって言われたいじゃん。
見た目も中身も、男らしくなりたいじゃん。
「…かわいいばっかり、やだもん……」
「えー?でもかわいいんだから仕方ない」
「かわいいより、かっこいいって言われたい」
散らばった化粧品を片付けていた細い肩を掴んで、ソファに押し付けて顔を近付ける。
グロスを持ったまま、Aちゃんは笑っていた。
「飛貴くんのグロス、剥げちゃった」
「え……?あ、」
「ふふ」
人にはたっぷりグロスを塗ったくせに、自分はリップを塗っただけの小さなくちびる。
そのくちびるにキスをすれば、おんなじピンク色のラメがキラキラとそこに移っていた。
「…じゃあ、ずっとちゅーしてれば全部Aちゃんに移る?」
「さあ?試してみれば?」
「そうする」
ぐちゅりと吸い付くようにくちびるが重なる。
グロスの匂いなのかな、キャンディみたいな、甘い匂いがする。
「…女の子とちゅーしてるみたい」
「……男だもん」
「はいはい、分かってるよ」
相変わらず「かわいい」と言って笑う彼女に、噛みつくようにキスをした。
伸びたマスカラのまつげが、まぶたに触れてくすぐったい。
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りつ(プロフ) - しいさん» ありがとうございます嬉しいです!!幸せな気持ちになって頂けるようちまちまと更新していきます〜! (2017年10月2日 8時) (レス) id: 7c91888883 (このIDを非表示/違反報告)
しい(プロフ) - いつも読ませていただいては幸せな気持ちになってます!!これからの更新も楽しみにしています\(^o^)/ (2017年10月2日 2時) (レス) id: ff1ac2d1a8 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - ふーさん» こちらこそお読み頂きありがとうございます〜!短い話ばかりですが少しでも暇つぶしになれば嬉しいです(*^o^*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 49628bd39a (このIDを非表示/違反報告)
ふー(プロフ) - りつさんのお話がまた読めて本当に本当に嬉しいです!!!!!!!ありがとうございます!! (2017年8月21日 19時) (レス) id: e57a3c666b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りつ | 作成日時:2017年8月21日 19時