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「……くん、」
「雄登くん！！！」
誰かが自分の名前を呼んでいる。
こんなふうに呼ぶのは一人しかいない。
重たすぎるまぶたを開けて、なかなか合わないピントを必死で調節する。
ぼやぼやの視界に映ったのは、今にも泣き出しそうなAさんの顔だった。
「……A、さん……？」
「バカ！！！何やってんの！！？」
「…え……？俺………」
頭が痛い。身体が熱い。気持ち悪い。
うまく身体が動かせなくて、脳みそがぐらぐらする。
どうやらリビングのど真ん中でぶっ倒れていたみたいだ。
視界の端っこに映った転がるグレープフルーツの空き缶。
そうか、いつのまにか全部丸々飲んでしまったのか。だめだな、品行方正を絵に描いたような、優等生の那須雄登を演じてばかりいたのに。
「…きもち、わるい……」
「ほら、水！！飲んで！！」
「はい……」
抱き起こされるように抱えられて、Aさんの綺麗な手がグラスを握っている。
冷たい水が身体の中を通ってゆく。
気持ち悪さは拭えないけれど、少しだけすっきりとしたような気がした。
「なんでこういうことするの！？死んじゃったらどうするの！？」
「…ごめんなさい……」
「信じらんない、バカ…ほんとに、死んじゃったのかと思ったじゃん……」
そう言ってぐすん、と泣き始めてしまったAさんは、いつも飄々とした、俺の言葉を笑って受け流すようなおとなの女の人とはまるで別人だった。
Aさんが俺のせいで泣いている。
俺のために泣いてくれている。
そう思うだけでふらふらの身体のまま天にも昇る勢いで嬉しかった。
俺は、本当に呆れた大馬鹿者なのかもしれない。
「Aさん」
「……なによ」
「だいすき、です」
「………ほんとバカ」
掠れた声でいつもの台詞を口にする。
フレンチネイルの彩られた細い指先が馬鹿な頭を撫でて、それから泣きながら笑ってくちびるが重なった。
アルコールなんかとは程遠い、苦しくなるくらい甘いはじめてのキスだった。
※未成年の飲酒は法律で禁止されています。
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りつ(プロフ) - しいさん» ありがとうございます嬉しいです！！幸せな気持ちになって頂けるようちまちまと更新していきます〜！ (2017年10月2日 8時) (
レス) id: 7c91888883 (このIDを非表示/違反報告)
しい(プロフ) - いつも読ませていただいては幸せな気持ちになってます！！これからの更新も楽しみにしています＼(^o^)／ (2017年10月2日 2時) (レス) id: ff1ac2d1a8 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - ふーさん» こちらこそお読み頂きありがとうございます〜！短い話ばかりですが少しでも暇つぶしになれば嬉しいです(*^o^*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 49628bd39a (このIDを非表示/違反報告)
ふー(プロフ) - りつさんのお話がまた読めて本当に本当に嬉しいです！！！！！！！ありがとうございます！！ (2017年8月21日 19時) (レス) id: e57a3c666b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りつ | 作成日時：2017年8月21日 19時
