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「………帰る」
「え……?いや、せっかく来たんだから回ろうよ」
「いやだよ。何であんたと二人で回らなきゃいけないのよ」
カキ氷片手にポカンとしている彼に苛立ちしか感じない。
今頃みんながどこで何をしているのかは知らないけれど、きっと楽しんでるに違いない。
うう、那須くんの浴衣姿見たかったのに。一生恨んでやる。
「というわけでバイバイ。また夏休み明けに」
「ちょっ、なんで…っ、わ!!」
「は!?ちょっと、危なっ……!」
何故か腕を思いっきり掴まれて、そのまま彼の力に引っ張られるようにして前のめりになる。
履き慣れてない下駄は、よろよろと足元がだいぶ危うげだ。
力任せに引っ張られて、ぼすん、とおでこがぶつかる。気付けばわたしは、コイツの腕の中。
「なっ、ななな……!」
「ご、ごめん……」
「はっ、離してよ!!」
「………」
「聞いてんのー!?」
ぐいぐいと離れようとしたけれど、不思議なことに腕の力は強まるばかり。
顔を上げればものすごく近い距離に彼はいた。
なにこれ、心臓が、ドキドキしてる。
「……そんなに、イヤ、かな……」
「…は?」
「最近、俺の名前呼んでくれないよね」
「な、なに言ってんの」
「おい!とかちょっと!とかばっかり。俺の名前忘れちゃった?」
耳元でこそこそと喋る声は何だかいつもより悲しげだった。
こんな幼馴染知らない。
わたしの知ってる彼はいつも馬鹿みたいにはしゃいでいて、わたしにちょっかいばかり出してくるお調子者。
こんなに背が高くなったなんて知らないし、こんなにがっしりとしているなんて知らなかった。
知らない。昔は何でも知ってたはずなのに、今の彼のことをわたしは何も知らない。
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りつ(プロフ) - しいさん» ありがとうございます嬉しいです!!幸せな気持ちになって頂けるようちまちまと更新していきます〜! (2017年10月2日 8時) (レス) id: 7c91888883 (このIDを非表示/違反報告)
しい(プロフ) - いつも読ませていただいては幸せな気持ちになってます!!これからの更新も楽しみにしています\(^o^)/ (2017年10月2日 2時) (レス) id: ff1ac2d1a8 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - ふーさん» こちらこそお読み頂きありがとうございます〜!短い話ばかりですが少しでも暇つぶしになれば嬉しいです(*^o^*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 49628bd39a (このIDを非表示/違反報告)
ふー(プロフ) - りつさんのお話がまた読めて本当に本当に嬉しいです!!!!!!!ありがとうございます!! (2017年8月21日 19時) (レス) id: e57a3c666b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りつ | 作成日時:2017年8月21日 19時