那須くんと金魚 ページ14
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「これ、那須くんにあげるね」
わいわいと騒がしい夜の街の中で、彼女はそう言って僕にそれを差し出した。
水の入ったビニールの中で、息苦しそうにふよふよと泳ぐ一匹の金魚。赤と白のまだら模様は、他のどの金魚よりも綺麗に見えたから不思議だ。
「あ、りがとう…」
「ふふ。大事に育てなよー」
浴衣姿の女の人たちに混ざった、ポニーテールにタンクトップ、ショートパンツにサンダルという彼女のラフ過ぎる格好。
涼しげな素肌は、夏の夜空にとても似合っていた。
ありったけの勇気を出して近所に住むおねえさんを夏祭りに誘ったのだ。
断られるかと思ったけれど、返ってきた返事は「いいよー」という驚くほど軽いノリだった。きっと、近所の男子高校生のことなんて何とも思っていない証拠だろう。
僕の手の中でゆらゆら金魚が揺れている。生まれてはじめて、好きな人からもらったもの。
よくよく考えればあの人のことだ。どうせ持って帰るのが面倒だったから僕に押し付けたんだろう。
それでもいい。当の本人は、澄ました顔して内心飛び上がるほど嬉しかったのだから。
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りつ(プロフ) - しいさん» ありがとうございます嬉しいです!!幸せな気持ちになって頂けるようちまちまと更新していきます〜! (2017年10月2日 8時) (レス) id: 7c91888883 (このIDを非表示/違反報告)
しい(プロフ) - いつも読ませていただいては幸せな気持ちになってます!!これからの更新も楽しみにしています\(^o^)/ (2017年10月2日 2時) (レス) id: ff1ac2d1a8 (このIDを非表示/違反報告)
りつ(プロフ) - ふーさん» こちらこそお読み頂きありがとうございます〜!短い話ばかりですが少しでも暇つぶしになれば嬉しいです(*^o^*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 49628bd39a (このIDを非表示/違反報告)
ふー(プロフ) - りつさんのお話がまた読めて本当に本当に嬉しいです!!!!!!!ありがとうございます!! (2017年8月21日 19時) (レス) id: e57a3c666b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りつ | 作成日時:2017年8月21日 19時