Linaria (ページ6)

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「日本だとどこに住むの？やっぱ東京？」

「んー、大阪。お世話になる予定のコーチが大阪拠点だから」

「おー、たこ焼きにお好み焼き。あとは、」

「オッパ食べ物ばっかり」

「そんなに食べたら太っちゃう」と頬を膨らませるAに、「楽しいことを考えてたほうが気が楽だろ？」と言うと目を逸らされた。

図星だな。

「別に寂しくないから」

「はいはい分かった分かったー」

「もう！」

Aを揶揄って遊んでいると、「ミノちょっと手伝って」と言うオンマの声が聞こえた。

「私も手伝います」

「Aちゃんはお客さんなんだから座ってて？その気持ちだけで嬉しいから」

「でも」と納得いかない様子の彼女に「スニとドゥンイの相手をしてあげて？あの子たち嬉しそうだから」とチュールを渡せば目を輝かせて受け取った。

今の顔、猫みたいだった。

「スニやー、本当に美味しそうに食べるねぇ」と嬉しそうな顔で言うAに見ているこっちが微笑ましく感じる。オンマも同じだったのか「見ているだけで幸せになれるわ」なんて言うから笑ってしまった。

「お茶の準備できたからAちゃん呼んで」と言われて近づくと、「オリンピックの頃まで成績を保てるかなんて誰にも分からないのにね」なんて声が聞こえて思わず立ち止まる。下ろした髪の隙間から見えた表情は暗い。

「A？」

名前を呼べば、先ほどの表情は見間違いだったのかと思うほどの笑顔でこちらを見上げる彼女。呆気にとられて固まる俺に「びっくりした時の猫みたい」なんて言って笑っている。

「そういえばさっきのオッパ、本当の警護員みたいだったねㅎㅎㅎ」

「笑いごとじゃないんだけど」

「だって、ちょっと面白かったんだもん」

「やー、歳上を揶揄うなんて」

────いっその事泣いてくれたら心の中に入れるのに。

無邪気に笑うAを見て、そんなことを思ってしまう俺は酷いだろうか。

彼女の精一杯の強がりに今だけは付き合ってあげようと決めて、笑顔の下に隠した涙に気づかないふりをした。

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