▼I'm always on your side. ページ4
◆Leeknow
「スニとドゥンイに会えないのは寂しい」と笑うAに、弟たちだけかという小さな嫉妬を込めて視界に入ったつむじを押す。
「わあ！ちょっと、」
「悪い子にはお仕置き。背が小さくなるぞー」
「…ジャンプが飛べなくなったらオッパのせいだからね」
Aの頭の中は常にフィギュアスケートのことなのだろう。
身長と体重が少し変わる。
たったそれだけで競技に影響がでるほど繊細なスポーツなのだと前に言っていたのを思い出す。
自分には遠い世界だ。
学校のこと、家のこと、面白かったこと。くだらない話をしているとあっという間に時間が過ぎる。
お互いの家が見えてきた時、隣を歩くAが一点を見つめて立ち止まった。どうしたのだろうと顔を覗き込むと、表情が固く怯えているようにも見える。
視線の先にはカメラを手にした男の人がいた。
「記者の人？」
「うん。リンクにいないから家に来たのかな」
「…取材は連盟なりを通すべきなんじゃないの？」
「まあ、そうなんだけど」と口籠るAの表情は曇っていた。
やっぱり、拠点を移す最大の理由はメディアなのだろう。
「オッパ先に家帰って。迷惑かけてごめんね」
「分かった、なんて言うと思うか？」
何故Aが謝らなければいけないのか。
────迷惑なのはあの記者だろ。
むしゃくしゃする気持ちを落ち着かせて、この状況をどうやって打開するか考える。
そういえば、家を出る時に着てきたアウターはフード付きだった。
アウターを着せて、フードを被せればパッと見ではAと分からないだろう。
サイズの合わないブカブカのアウターを着るAは小動物みたいで、こんな時なのに頬が緩みそうになる。
「後ろ歩いてて」
「でも、」
「大丈夫」
あいつがAに気づかないように、俺の後ろを歩かせる。
近づく俺たちに気づいたのか、向こうから探るような視線を感じて空気がピリピリと張り詰める。
────頼むから気づかないでくれ。
そんな願いが通じたのか、お目当ての人ではないと判断したらしく、持っていたスマホに視線を落とした。
その隙に、自分の家の玄関を開けてAを押し込む。
無事に家に帰れたことに安堵して、緊張感が一気に緩んだ。
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作者名：こはる | 作成日時：2024年2月11日 22時
