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オンニたちが去って、オッパと2人になる。
「リノさんは行かないんですか」と言うと、むっとした表情で腕を掴まれた。戸惑っているとそのまま人気のない死角に連れられる。
狭い空間に、ふたり。
茶色の髪をセンターで分けている姿は、昔のオッパとは違って新鮮だ。
スリーピースのブラックスーツに革靴、胸元にはネクタイにビジューのブローチがきらりと輝いている。
さっきまでオンニたちがいたから気にならなかったけど、見慣れない姿のせいでオッパを直視することができない。
────宝石、みたい。
オッパが踊る宝石と言われているのは知っていたけど。ステージに立っているわけでもないのに、キラキラと輝いて見える。
────それに対して私は。
さっきのオンニたちの姿を思い出す。立ち姿から綺麗で、品があって、ほんの少しの色気もあって。大人の余裕、というものだろうか。心の中に分厚い雲が広がったみたいにもやもやとする。
ここまで考えて、ふと気付く。
まって、これって。
────嫉妬、してるみたい。
いや、ないって。ありえない。オッパは兄みたいな存在だからで。ほら、大好きなお兄ちゃんがとられた妹、みたいな。そういうやつだから。
「…─ ──！A！」
思考の渦に飲み込まれて、オッパに呼ばれていることに気づかなかった。顔を覗き込まれて、はっとする。
「体調悪い…？」
「ううん、大丈夫」
ほっとした表情になったオッパは、私の左手を見ると満足そうに「ブレスレットしてるんだ」と言い、ふいに手を握った。
「なっ、に」
「魔除けになるように、ね？」
触れられたところから、じわじわと熱が回っていくのを感じて、空を飛んでいるみたいにふわふわとする。アメみたいに、甘い。
オッパにも聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい、心臓がバクバクと音をたてる。口をはくはくとさせて、言葉が出てこない。
静寂を破ったのは、私の持っていたスマホの通知だった。確認すると祝賀会に一緒に出席していたオンニから、「先生が探してる」という内容で。
「またあとで！」とオッパに断りを入れて、駆け足でその場を離れる。会場に戻ると「顔真っ赤だけど」と不思議そうな顔のオンニ。「ちょっと暑くて」と誤魔化すと、それ以上追求されることはなかった。
────これ以上、勘違いさせないで。
未だ高鳴る胸を落ち着かせようと、大きく息を吐いた。
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作者名：こはる | 作成日時：2024年2月11日 22時
