▽ ページ3
・
「そういえば、日本行き決めたんだな」
メディア発表は今日だったから、ニュースになっていたのだろう。
テレビやネットは怖くて見れていないけど、きっと好意的な意見だけではないはずだ。
「拠点を移す話はずっと出てたんだけど、なかなか話が固まらなくて。
日本なら合宿で何度か行ったことがあるし、時差もなくて近い国だから良いかなって」
2011年に2018年冬季オリンピックの開催地が韓国・平昌と決まってから、母国開催のオリンピックで金メダルを、というムードは高まる一方だった。
同い年のチャ・ジュンファンがカナダのクリケットクラブに拠点を移したのも、技術の向上だけでなくマスコミ対策についてコーチの助言があったからだと聞いている。
ジュナニには一緒にクリケットに行かないかと誘われたけど、カナダは遠すぎて行く気にならなかった。流石に時差14時間はキツすぎる。
「知らない土地で生活できるのかオッパは心配だよ」
「オンマみたいなこと言わないでよㅎㅎㅎ」
「やー、俺は真剣なんだけど?」
日本にはスケーターの友達もいるし、きっと大丈夫。
日本語だって少しずつ練習してるんだから。
ああ、でも。
────こうやってオッパと並んで道を歩くことができなくなるんだなぁ。
家が隣同士で、小さい頃から家族ぐるみで仲が良かった私たち。
一人っ子の私にとって、3歳上のミノオッパは本当の兄のような存在だった。
思い出がたくさん詰まった、生まれ育ったこの場所としばらくお別れをしなくちゃいけない。
ミノオッパとも────会えないんだ。
迫る現実を目の当たりにして鼻の奥がツンとする。
────オッパと会えないのは寂しい。
そんな本音を見透かされないように「スニとドゥンイに会えないのは悲しいな」と笑う。
「弟たちだけかよー」と拗ねた顔を見せるオッパの声は優しかった。
・
▼I'm always on your side.→←▼I wish you were here with me.
381人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:こはる | 作成日時:2024年2月11日 22時