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「何？」
「あ、いや、」
────何やってるんだ僕は。
ヒョンのことだ。幼馴染──イ・Aさんのことを聞いたところで答えてくれないことは明白なのに。
きっと今だって、電話の相手は彼女だったんだろう。彼の穏やかな表情が全てを物語っている。
何も言わない僕を不思議そうに見つめると、ふっと笑ってから「安心しな。俺はアイドルだろ」と言う。
アイドルだから────恋愛なんてしない。
僕が何を考えているのか、このヒョンには全てお見通しなのだろう。変わった人ではあるけど、嫌々言いながら面倒見は良いし、周りをよく見ている人だ。
何と返すのが正解か分からず黙っていると「お前今日おかしいよ」なんて言われた。いや、おかしいのはヒョンなんだけど。
「何か用事があって来たんだろ？」
「……眠れなかっただけです」
「朝型人間なのに珍しい」
「そういう日もあるんですよ」
寝れないのはヒョンのせい、とは言わないでおこう。
鼻歌を歌いながらスマホをいじるヒョンをちらりと盗み見る。今日1日ずっと気になっていたけど、この数分で確信に変わった。
────きっとヒョンは恋をしている。
とはいえ僕たちは3年間恋愛禁止だから、責任感の強いヒョンはその気持ちを心の奥深くに仕舞い込むのだろう。
こんなことを思うなんて、アイドル失格かもしれない。だけど、不器用で優しいリノヒョンだから。
────その気持ちに素直になれる日が来ますように。
そんな小さな願いを込めて、「明日も早いんだから部屋戻るぞ」と言うヒョンの背中を追いかけた。
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作者名：こはる | 作成日時：2024年2月11日 22時
