▼I say a little prayer. ページ18
◇ Seungmin
最近、ヒョンの様子がおかしい。
もともとちょっと変わった人ではあるけど、そういう意味ではなく、少し元気がない気がする。
プレデビューを終えて、今はデビューに向けて追い込んでいるからそれが原因かと思ってみたけど、それも違う気がして。
スマホをよく見ているから女の人かとも思ったけど、ヒョンがそんなことをするなんて考えにくい。
-「次は、平昌オリンピックの話題です。江陵アイスアリーナで行われたフィギュアスケート女子ショートプログラムでイ・A選手が6位発進と韓国勢トップとなりました。いつもより緊張している表情に見えましたが、」
-「トリプルアクセルでステップアウトとなりましたね。大きな失敗をすることが少ない選手なので、オリンピックという舞台はやはり違うのでしょう。明後日行われるフリープログラムでの巻き返しを期待しましょう」
そして、最近分かったことがある。
ヒョンはフィギュアスケート選手のイ・A選手の名が聞こえると反応する。今だってそう。
名字が同じだから兄妹かと思ったけど、ヒョンは一人っ子だって言ってたから違うし。大体、韓国で李は国民の15%を占めるから、ありふれた名字でしかない。
ということはただのファン？
実際、高校でもイ・A選手は人気だ。空港でファンに囲まれる姿を見たら、人気のアイドルかと思うくらい。
A選手に憧れてフィギュアスケートを始める小さい子もいると聞くし、ジャンプを真似して怪我した同級生もいたっけ。
ヒョンジニも気になっていたのか、「A選手って大人気だよね。ヒョンも好きなの？」と聞いている。
「あー、いや、幼馴染」
「幼馴染！？」
目をぱちぱちとした後、なんでもないように爆弾を言い放ったヒョン。
"幼馴染"
その言葉に周りは「嘘だー」「妄想はよくない」なんて揶揄っていたけど、一瞬見えた、見てしまったその表情に狼狽える。
────あのヒョンがあんな表情をするなんて。
料理が足りなければ人数を減らせば良いとか言ってしまうヒョンが、すごく優しい目をしていた。まるで、愛おしいものを見つめるかのように。
その表情が意味するものが思い浮かんでしまい、思考をかき消すように首を降る。
そんな僕の様子を見たヒョンジニが「スンミニ犬みたい」とニヤニヤしながら寄ってくる。嫌な予感、と思ったのも束の間、髪の毛をぐしゃぐしゃにされて思わずため息が出た。
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作者名：こはる | 作成日時：2024年2月11日 22時
