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「つまらない御託をダラダラ並べてないでいい加減好きって認めたらどうなの?」
「……アイドルになったばかりの人に言う言葉じゃないですよ」
アイドルに恋愛は御法度だ。スキャンダルでダメになったグループを知っているし、そもそもうちはデビュー後3年は恋愛禁止なんだから。
Aの前ではアイドルではなくただのイ・ミンホでいたい。俺にとってAはフィギュアスケート選手ではなく、ただのAだ。
でも、他人から見たら俺はアイドルで、Aは国民から愛されるフィギュアスケート選手。
これは変えようのない事実だから。
「恋愛とは無縁の人生を送るんです」
「私にとってはねぇ、大切な2人なの。Aだって、ミノと同じように妹みたいに大切なの。
だから、2人を見てるともどかしいのよ」
真っ直ぐに伝えてくるヌナには俺の気持ちがバレているようで、さっきのみこんだ思いが溢れないように咄嗟に目を逸らす。
アイドルになることは自分で選んだ。
一般的な生活を捧げて、嫌でも数字に振り回される世界。キラキラと輝いて見えるその裏は地味なもので、練習漬けの毎日だ。
会社はアイドルを育てるために時間と資金を投じる。結局は投資なのだから、デビューして早々に恋愛なんてされたら堪ったもんじゃないだろう。
そう。全て理解した上で自分で選んだ。
メンバーに迷惑をかけるつもりだって毛頭ない。
でも────
「…思ったよりもつらい、」
思わず溢れてしまった言葉に、はっとして目の前のヌナを見る。
「はは、何言ってるんでしょうね」
笑って誤魔化すと「本音を吐き出すことは悪いことじゃないでしょう」と言われて、これ以上感情が溢れないように奥歯をぐっと噛み締めた。
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▼I say a little prayer.→←▼ This is tougher than I thought.
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作者名:こはる | 作成日時:2024年2月11日 22時