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「これをオッパとオンニで?」
「そう。パーツは俺が選んでヌナが作った」
シルバーのブレスレットは華奢なデザインで、中央には小さな石が台座に嵌め込まれている。光の入り方によって透明にも青白くも見えるそれはムーンストーンというらしい。
「わぁー、本当に綺麗だね」
「気に入ってくれたなら良かった」
「大切にするね」ときらきらした目でブレスレットを見つめるAを見て胸がぎゅっとなる。嬉しいけど、もやっとしたような、変な気持ちだ。
俺の目的は果たせたわけだし、そろそろ帰らないといけない。ここで別れたら、きっとまた当分は会えないのだろうと思うと寂しさで胸がいっぱいになる。どうにか重たい腰を上げると、「ちょっと待って」とAが俺を引き留めた。
「これ、もしよかったら」
「マカロン?」
「うん。気分転換にいっぱい作っちゃって。オッパと、セアオンニの分も」
「はい」と綺麗にラッピングされたものを2つ渡される。いつの間に凝ったお菓子作りまでできるようになったんだなぁと感心していると、「……もしかして減量中だった?」と不安そうな顔をされた。違うと返せば、ほっとした表情になるA。
可愛い、と心の中で呟くとAの目がこれでもかというほど見開かれた。どうやら心の声が漏れていたらしい。
「私のこと猫か何かだと思ってるでしょ」
「ウリコヤンイ〜」
赤くなっているだろう耳を見られないように髪の毛をわしゃわしゃすると、猫が威嚇するみたいに睨まれた。正直全然怖くない。
「ねえ、スマホ貸して」
「……オッパ、今度は何する気?」
「いいから」
困惑するAをよそに半ば強制的にスマホを貸してもらい、Aのスマホで俺のカトクのQRコードを読み取る。知り合いに表示されたAという文字を確認し、友達に追加した。
「アイドルになった人がやるようなことじゃないと思うんだけど」
「Aの前ではアイドルじゃないって言っただろ?」
「私がオッパの連絡先悪用したらどうするの」
「Aはそんなことしないだろー。脅したって無駄だよ」
彼女との繋がりがほしくて、ただ連絡先を交換しただけ。別に悪いことではない。距離をとられることが怖いのも、失いたくないと思うのも、Aは妹のような存在だから…だと思う。特別な感情ではないはず、と心の奥底から溢れそうになる感情をのみこんだ。
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作者名:こはる | 作成日時:2024年2月11日 22時