▼I wish you were here with me. ページ2
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「うわぁ、久しぶりだなあ」
通っている中学校の近くに、標高150m程度の小高い山がある。
拠点としているリンクに記者の方が来ているらしく、コーチから今日はリンクに来ない方が良いと連絡を受けてから数時間。
なんとなく落ち着かない気持ちをどうにかしたくて、陸トレついで走っていたらたどり着いたこの場所。
木々に囲まれた道の脇には、鉄棒や健康遊具が置かれている。
────小さい頃、よくミノオッパと遊んだっけ。
たくさんの思い出を一つずつ拾っていくように、道を踏みしめる。
30分程度で着いた頂上は人気がなく、がらんとしていた。
東屋に入り、金浦の街並みを眺めながらぼーっとしていると、遊歩道のほうからタッタッと走る足音が聞こえてきた。
せっかく一人を満喫していたのに残念だなと思っていると、「A？」と聞き覚えのある声が聞こえた。
「ミノオッパ！」
さっきまで思い浮かべていた人が現れた嬉しさで声が弾む。
思わず東屋を出ると、何故だか呆れた顔をしたオッパがいた。
「もうすぐ暗くなるのに一人で出歩くなんて」
「大丈夫だよ、誰も来ないし」
「だから問題なんだろー。変な人がいたらどうするの」
「スマホ持ってるし」と言おうとしてポケットを漁るが、スマホが見つからない。あれ、家に置いてきたのかも。
あははーと笑って誤魔化すと、盛大なため息をつかれた。
「そんなにため息つくと幸せが逃げちゃうよ？」
「……」
じとーっとした目で見られて咄嗟に「ごめんなさい」と謝ると、「よろしい」と言って歩き出す。
「でも今はオッパがいるから安心だね」
「将来はAの専属警護員にでもなろうか」
「それは心強いけど、オッパにはオッパの夢があるでしょ？」
テコンドーの構えをするオッパを見上げると、口を開けて目をぱちぱちさせている。動揺してるの、本当に分かりやすいな。
テレビのインタビューで「歌手になりたいです」って言ってたの、知ってるんだから。
一般の高校に通いながら、ダンスレッスンを頑張っていることだって。
数年前にオーディションを受けたらしい芸能事務所とはご縁がなかったみたいだけど、オッパはダンスが上手でかっこよくて、なにより優しい人だから。
きっとその人間性に惹かれる人が現れるだろう。
────数年後には芸能人になっているんだろうな。
どれだけ背伸びをしても届かない距離に悲しくなった。
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作者名：こはる | 作成日時：2024年2月11日 22時
