自 販 機 の 横

"綺麗" ページ33

トイレに行きたくなって控室を抜けた。

結局控室に行っても、あの空気の中ジフンちゃんに話しかけることができなかった。
よし！って意気込んだ時に限ってカメラが入って来て控室の撮影始まっちゃうし…



いつ言おう、このままだとスマホで伝えることになっちゃう。



…あ、スマホがあるじゃん。呼び出せばいいのか。





トイレから出て衣装のポケットに入れていたスマホを取り出す。


〈ちょっと出て来れる？〉


控室から見える場所にあるトイレだし、きっとこれで大丈夫だろう。




『Aちゃん？』




控室の様子を伺いながら待っているとかけられた声。




「あ、ウォノさん…」

ヒールを履いた私よりも背の高いMONSTA Xのウォノさんがそこにはいた。

WH「本名のホソクで呼んでって前も言ったじゃん」

「ああ、そうでした…」


前にバラエティーで一緒になった時、話しかけてくれたウォノさん。
ウォノ、という名前が固定され過ぎてて、本名で呼ぶのは何となく遠慮してしまう。



「あ、ステージ見ました」

WH「あ、ほんとに？どうだった？」

「かっこよかったです！！」

WH「因みに…誰が？」

「皆さんです！」

WH「ああ…皆さん…ね…」



さっきステージが終わったウォノさん達はきっと今から控室に向かうのだろう。
ウォノさん以外人が見当たらないけど…



WH「あ、Aちゃん凄かったね、ステージ」

「あ、見ていただけましたか…ありがとうございます！」

WH「凄い綺麗だったよ」



恋愛感情は持っていないけれども、男性に"綺麗"とか言われたらやっぱり照れる。
良い反応が思い浮かばず、無難に"ありがとうございます"と返すと、徐ろにポケットからスマホを取り出したウォノさん。

さっきの私を思い出して、控室の方を見てみるけどジフンちゃんの姿は見当たらない。






WH「ねえ、連絡先…交換しない？」






つい1、2週間前にジフンちゃんが言ったものに似ているその言葉はやけに鮮明に耳に入ってきた。

劣等感ーWZー→←安堵と爽快感と

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す