怪盗の兄、公安、組織の一員…これ、トリプルフェイスか？Ⅷ (ページ35)

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三百七十二話ページ35

黒羽side

広がった空間の入り口付近に名探偵がいるのは確認したが、特に他に見知った人間は見受けられず、かつこちらのことにも気づかれてはいないようなので、絡繰箱に集中することにした。

一見するとただの木箱だが、怪我をして退散する人間が多いことから、一筋縄ではいかないんだろう。
無闇に引っ張ったり、押したり叩いたりすると怪我するわけだ。

それを念頭に置いた上で仕掛けを少しずつクリアしていく。

コ(他の人は直ぐに引っかかるのに…あの人、引っかかる気配がないな…)

かちゃかちゃと無機質な音だけが周りに響く。
だいぶ仕掛けも外れ、おそらく後2、3個仕掛けを外せば箱が開くだろうという状態にはなったが、ここで開けて下手に怪しまれても困るのであえて仕掛けに引っかかることにした。

ﾊﾞｼｭｯと飛び出した針が、皮膚をかすめて切り傷のようなものができる。
つくづくとんでもない仕掛けだ。

一影「ッ」
コ「…？黒沼さん…？」

どうやら気づかれたらしく背後から名探偵の声。
それに気がついたのか沖矢昴もこちらをみているようで、二人分の視線が背中を刺した。
これ以上ここにいるといらんことまでバレそうだと思った俺はその場をいたって自然にそして迅速に離れた。
仕掛けに引っかかってリタイアした他の人たちと同様に。

コ「あ…(なんでここに？)」
沖「……」

とてもまずいことになってしまった。気づかれない予定だったが、まさか名探偵が、絡繰箱の近くにいるとは。

快(兄貴？？…(*´꒳`*)なんかほっとした…)

なんか快斗の視線まで感じるけどとりあえずは目の前のことを優先しよう。

まず周りを見る限り、警察は中に入っていない。規制も特に行なっておらず荷物チェックや顔チェックの類もなし。
ほぼノーチェックで中に入ることができる。そう言った面ではかなり楽な状態だが。問題は丹生にぶら下がっている鉄柵と全ての出入り口に設置された鋼鉄シャッター。

行きは良い良い帰りは怖いだ。
入れても脱出は容易なものではない。

快斗のことだから、ある程度放っておいても自力でなんとかしそうなものだが、外には中森警部。
気を剃らせればその好きにうまく快斗を逃すことは可能だがどうしたものか。

そんなことを悶々と考えていると後方で柵が落ちた音がした。
どうやら四方八方への移動も可能で、動く物体を正確に捉える代物らしい。しかも作動させたのは毛利探偵だった。

口に水を含んでいた毛利探偵はそれを吹き出し箱に引っ掛けていた。