救われた少年 中編 ページ19
フレア視点
俺の家は料理人一家だった。
でも、だから料理人になりたかったわけじゃない。
美味しい料理を作れるお父さんに憧れた。
お父さんを目標に、俺の夢は“料理人”になった。
同年代の人には、男の人が料理なんて……と言うけど、聞こえないフリをしてきた。
絶対に料理人になってやるって決めた。
なのに、その未来は閉ざされた。
世界を破滅に導く波。
その波の魔物に視界を奪われたのだ。
医者からは、諦めろと言われた。
こんなんじゃ、もう料理なんて作れないじゃないか！
手も足も使えるし、耳も鼻も使えるし話すことができる。
なのに、見えなかったら、意味がない。
それから俺は家に引きこもった。
何をするにもやる気が出ない。
何を目標に生きていけばいいんだ……
料理人になれない俺なんて……
それを両親はただ見ていることしか出来なかった。
当然、仕方の無い事さ。
そんな中、お母さんは独り言のように呟いた。
「奇跡は起きないかしら……」
奇跡？
そんなものはないよ。
あったら、俺はとっくに視力が戻っている筈だ。
ある日のこと。
お母さんはつい最近召喚された聖女に依頼を出すことにしたらしい。
無駄だよ。
この時の俺は完全に諦めていた。
中途半端な希望はより絶望を感じやすくなるから。
だけど、それは違ったんだ。
見えないけど、僕の目の前に人がいる。
多分、聖女かな。
「……【
そう言った瞬間、奇跡が起こった。
フレア「え、あ、見える……目が見える！」
暗闇の中から解放される感覚だった。
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作者名：桜小路美彩 | 作成日時：2019年3月29日 22時
