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貴女side
空気が酷く薄く感じる。
屋敷の白い扉の金の丸いドアノブがドライアイスに手を突っ込んだ時みたいにキンキンと熱いのか寒いのかも曖昧な冷気を纏っている。
毎日のように行き来していた玄関が大口を開けて待つ怪物に見えてくる。
震える右手でノブを触り、捻る。
『ッ”“”!!!』
肉が焼き爛れていくようだ。手の皮がノブに引っ付いて痛い。
薄らと、私の目の前に剣山に刺し抜かれたメビウスや、バビルスの生徒達が朧気に映る。
『、ッ、いる、ま、”、めびうす、』
いるわけない。いるわけないだろ。
だから私の目の前の床に広がる血の海も、
私の背後に佇んでいる身体の何処か、否、ピッタリと致命傷となる部位がひしゃげてしまったような悪魔の影の山も、私の脳の記憶から作り出しただけの偽物な訳で、
嗚呼、これだから悪周期は嫌なんだ。
心が折れそうな時にばかり、嫌なものを見せてくる。
助けてくれよ、
“大丈夫、これは全て【幻覚】ですよ。
大丈夫ですよ。大丈夫。
私がいますよ。貴女を助けられるのは私だけ。
私がいます。”
……うん。
“さぁ、足を進めねば。
私と同じように、私を待ち望む子達がいます。
助けましょう。”
……はい。
“『私は魔界の、番人ですから。』”
二重人格なわけじゃない。
ただ、私がこう胸の中で唱えると、私は本当に救われたようなふわふわとした心地になれるのだ。
そうして考える。
私に救われた人もこんなに気持ちのいい心地になれるのだろうかと
それなら、足を動かし、体に鞭打つのも吝かではない。
楽しいことも、嬉しいことも、共有した方が幸せになれるに決まっている。
“『今、行きますよ。』”
背筋を少しピンと伸ばし、床の血の海を蹴って私は目に見えずともそこにあるノブを捻った。
そして夢幻の森に穴を開け、“本当の魔界”にと降り立つ。
後ろに着いてくる悪魔の影は、もう居なかった。
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お茶漬けモドキ(プロフ) - ひのやさん» 了解しました!ありがとうございます! (4月25日 8時) (レス) id: d14560e55c (このIDを非表示/違反報告)
ひのや(プロフ) - お茶漬けモドキさん» できたと思います! (4月25日 8時) (レス) id: cd87d954a1 (このIDを非表示/違反報告)
ひのや(プロフ) - お茶漬けモドキさん» おけです!少し見てきますね! (4月25日 8時) (レス) id: cd87d954a1 (このIDを非表示/違反報告)
お茶漬けモドキ(プロフ) - ひのやさん» こちらこそすみません💦続けてお手数お掛けしますがXのDMを公開して頂くのは可能ですか?設定から機能を選択できると思います。 (4月25日 8時) (レス) id: d14560e55c (このIDを非表示/違反報告)
ひのや(プロフ) - お茶漬けモドキさん» あっ👉🏻👈🏻💦すみません!ありがとうございます。アカ名了解です。 (4月25日 8時) (レス) id: cd87d954a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひのや | 作成日時:2023年12月20日 0時