第四話 ページ4
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目を見開いた美貌の人に、あんずはちょっとだけ嫌な予感がした。というか、本当に何の話なのだろう。これ、なにかの勘違いとかじゃなくて、本当にあんずの話なのだろうか。
あんずが男子に詰め寄られていても余裕なのは、そういった現実感が持てていないことも理由だった。
なんというか、他人事のように思えたからだ。
だって、正直、最初から1年生が捲し立てる言葉の意味が検討もつかない。
『姫さま』とはなんだ、『恩恵』とはなんだ。
『不敬』だなんて、そんなことはしていない。恩知らずなんて、恥知らずなんて、言われることはしていない、はずだ。
でも、本当に？意味も状況も分からないが、もしかして、なにかとても失礼なことをしているのではないか？
あんずは場を支配する沈黙を、図太い精神で貫いた。
「あの─」
「ああ、うちのクソガキが迷惑かけたね。『こうなる』のが目に見えてたから、『俺たち』はアンタに近づかないようにしてたのに…」
貫こうとしたら、遮られてしまった。
ううん、たぶん、『意図的に』遮ったのだ。
雰囲気が、冷たい。声も、分かりにくい変化だけど、1年生の子に向けたのより数段冷たくなってる。証拠に、1年生の子が目を見開いて美貌の人を見てる。
「『俺たち』は他の奴らとは違う。アンタに世話になることは、多分ないよ。でも、他の奴らの面倒は見てやって。それがアンタの『義務』で『恩返し』でしょ。アンタのせいで…図々しく不相応に座ってるアンタの席は、『あの子』のものだったんだから。その席の仕事位はこなしなよねぇ。今回の件は…まぁ、事故みたいなもんだから。気にしないで。」
「瀬名先ぱ──」
「行くよ、ヒョッコ。プロとして、時間は有効に使いな〜」
それはあんずと過ごす時間は無駄ということだろうか。なんというか、発言する言葉全てに嫌味が含まれているような気がする。冷たい雰囲気で勘違いしているだけなのだろうか。でも、1年生の子に対して話す時のトーンと、やっぱり違う。彼に対する声音は刺々しいけど、どこか優しい。
あんずという存在を忘れたように、忘れようとするように、背を向けて去る2人の姿。
「…………」
その姿を見送っている時、気がついたのだ。
瀬名先輩の向かう先──同じユニフォームをきた数人の人たちが、悲しそうな、憎らしそうな表情であんずを見ていた事ことに
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作者名：名無し18599号 | 作成日時：2024年3月12日 15時
