第五話 ページ7
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「ははは。すまんすまん、どうも俺は加減が苦手でなあ……『弱ってる人間は、とりあえず赤ちゃんか豆腐のようなものだと思え』というAさんの昔の言葉に従い、そう接している」
「誰が豆腐だ。……そういや『豆』で思いだしたけど、さっきケイトを見かけたぞ。ママ、まさかあいつにもコンサートのチケット送ったの？ やめろよ〜、夢ノ咲学院のやつらとは会いたくないって言ったじゃん！」
「ははは。俺もAさんも『夢ノ咲学院のやつら』だぞお、一応。狭い業界だし、レオさんが今後もAさんとアイドルをつづけるならいつまでも避けられないと思うけどなあ……音楽は、世界の共通言語だからなあ。そんなの、レオさんには釈迦に説法だろうけど」
繋いだ手に力が入る。Aはそれに握り返して、レオに微笑みかけた。
「しかし念のため、疑いは晴らしておくけどなあ……。敬人さんがこの場にいたっぽいのは、偶然だぞお」
斑が言うには、『MAM』として参加するコンサートのちょっと後に、けっこう由緒正しいオーケストラが公演をやるらしい。Aは一応、何故か『嫌な予感』がして音楽堂などを調べていたから、予想は当たっていたみたいだった。
「俺の参加するコンサートは、いかにも敬人さんが嫌いそうなやつだしなあ。不謹慎だ！って怒髪天を突く勢いで説教してきそうな気がするぞお？」
「わはは。世界中の鎮魂歌や葬送曲を集めてノリノリで演奏する、楽しい地獄コンサートみたいな感じだっけ ？意味がわからなくて好き！」
レオはそう言って笑うと、もごもごと口を動かして悩んで──困ったように笑って言った。
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作者名：名無し18599号 | 作成日時：2024年3月12日 14時
