スカウト！コンチェルト ページ3
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うん。今回の曲も素敵だ。
Aは街中にいたが、繋がれた右手に全てを任せ、目を閉じてうっとりと聞き惚れていた。
「(あ、ここで転調するんですね。ふんふん…♪ここでフェイクいれてもいいかもしれませんね…♪)」
なんて幸せだろうか。幸福なことは星の数ほどあるけれど、Aにとってこの幸福は幼い頃からの至福のときだった。
「(ああ…本当に、昔に戻ったようです…。昔はずっと、こうやって…あなたがわたしの手を引いてくれていましたね…。その手が、暖かくって…有難くって…だぁい好きでした…。)」
ゆっくり、と目を開く。
そこには『〜♪』と鼻歌を歌っている己の大好きな人。
すぐに『ぱちり』と視線があって、彼はくわえていたたい焼きをAに差し出した。
「ん、あ〜」
「あむっ、もぐもぐ……甘くて美味しいですね…♪」
「買ってよかったよな〜♪」
そのまままた彼の口にたい焼きは戻っていく。Aは一口で満足して、曲の海へと戻ろうと──
「？！月永！それに、お前…！？」
「ふぇ？おぉっ、えぇっと…その眼鏡はケイト！」
Aはその声にイヤホンを外し、繋いだ手を後ろへと引いた。
うお、と小さく声を上げた彼──レオに内心謝罪しながらも、声をかけてきた人物ににこやかに応対する。
「眼鏡で判別するな。生きていたのか貴様、ここでAと手を繋いで何をしている。」
「こんにちはケイトくん。レオくんとわたしはちょっと用があってお出かけしているんです。時間があまりないので、ここで失礼したいのですが…」
隣町なら、夢ノ咲学院の人間に出会う確率は限りなく低い。けれどその確率を引いてしまった──もしくは、いいや、たぶん確定で用事が一緒だ。
確かAたちが向かう先には、彼──敬人の、いいや『彼ら』の趣味趣向に合うような催しがあったはず。
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作者名：名無し18599号 | 作成日時：2024年3月12日 14時
