聞いてほしい。 ページ41
家の中に入る。
前まで、自分が住んでいたとは思えないくらい空気が重くてなんだか居心地が悪かった。
リビングに入るとソファーで父が新聞を読んでいた。
｢何しに来た？｣
私に気づいた父がそう言う。
(あっ...)
思わず、声が出なくなる。覚悟を決めてきたはずなのに、私、今怖がってる...？
｢何しに来たと聞いてる｣
答えない私に父がもう一度言う。
(よし)
もう一度勇気を振り絞り、今度こそ話を始める。
『今日は、お父さんに言いたいことがあって来ました。』
父は、新聞から目を離そうとしない。
手が震えそうになるのを必死に抑える。
『私は、今歌い手をやってます。』
｢.........。｣
父がチラッとこっちを見た。
｢何だそれは｣
『歌い手っていうのはね...』
私は、説明をしようとする。しかし、
｢いや、言わなくていい｣
『えっ...？』
｢どうせお前のやることだくだらない事なんだろ｣
『違っ』
｢そんなことを言いに来たのか｣
『お父さん...』
｢そんな暇あるなら勉強しろ｣
『ねぇ...』
｢一人暮らしを許してやってるんだ そのくらいやりなさい｣
『ちょっと...話聞いて...』
｢お前とする話なんかない｣
『.......。』
｢とっとと帰れ｣
父はもう話すことは無いとでも言うように、新聞をたたみリビングから出ていこうとする。
(こんなことをするために来たんじゃない...)
『お父さん！！』
私は、叫んだ。
父が少し驚いた顔をする。しかし、すぐにいつものような顔に戻る。
｢大きな声を出すな｣
『だって、お父さんが話聞いてくれないから』
｢お前の話なんか...｣
『いいから、聞いて！！』
父の言葉を遮って私は言う。
父が次の言葉を言おうとするが、かまわず私は自分の言いたいことを話し出した。
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作者名：らむ。 | 作成日時：2018年6月23日 10時
