キミの漢字が書けません。【萩原研二】

11月7日 ページ9

いつもと変わらない日だった。




普通に出勤して、デスクワークして。




本当に、何も変わらない。




はずだった。




変わってほしくない。このままが良かった。




仕事をしていたら、松田くんから一本電話がかかってきた。




疲れた頭はほとんどの言葉を流していたと思うが、これだけは聞き取れた。




「ハギが…死んだ。」




一言目。本当に一言目。




倒れそうになった。近くにいた伊達くんに支えてもらってなんとか立ててたけど。




「どうした鈴木。大丈夫か！？」




『萩原くんが…萩原くんが…』




伊達くんに携帯を渡して、後の会話は任せた。




今回ばかりは上司も承諾してくれ、病院へ向かった。









『松田くん！』




「…きたか。」




ついて速攻、もぬけの殻の松田くん。




犯人にうまいように操られて、それでそのまま。




さっきまで生きてた。




息してた。




さっきあったし、普通に、「流石に俺の漢字覚えた？」って、そんな、いつもの会話を交わして。




なんで爆発死なの。肉片しか残らないじゃん。




私は膝から崩れ落ちた。

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