第31話 ページ31
静かに浮上した意識。目が誰かの手に包まれて、じんわりと暖かい。
「____きろ」
聞き馴染みのある声にAはうっすらと目を開けた。
時刻は16時。もう日が傾いてきている。強い西日にまた目を瞑り、頭を撫でる爆豪の手を受け入れた。
緑谷が寝かせた時と同じように、爆豪もAの目を覆って自分の手に口付けた。そうすれば、何をしても起きなかったのに、直ぐに目を開けた。
「体調は」
首を横に振ったAを見て爆豪は安堵する。起き上がってみればA組の者は静かに、こっそり見守っていることが窺えた。
「寮まで送るから準備しとけや」
『ん…』
爆豪はそう言うと1度寮の外へ出る。もうすぐ帰ってくる緑谷に話があったからである。
残されたAは未だ眠い頭を叩き起してソファから滑り降りた。
なぜ眠っていたのか。その経緯を思い返した。確か、壊理と共にA組の寮まで来て、沢山の人に囲まれて、それで、それで緑谷が＿＿。
『(…“おまじない“、かなぁ)』
かけてあったブランケットは爆豪のものだろう。Aはそれを綺麗に畳んで持ち直した。彼が戻ってきたら返そう。嗚呼、そうだ。眠らされる前に泣いてしまって、幼馴染のクラスメイトを困らせてしまった。
Aはそれを思い出すと、途端に焦りの気持ちが心を囃し立てた。
謝らないといけない。だって、話しかけたら急に泣き出して急に意識を失うなんて。困惑する以外にないだろう。Aだって絶対狼狽える。
共有スペースを見渡して、近くに来て話しかけてくれた者を探す。目立つ赤髪。そう、あの時一番近くにいた漢気で有名な切島である。
Aは切島に静かに近づくと、向こうも真逆よって来るとは思はなかったものだから、本当に驚いた。
『あ、あの』
「ハイ！！！」
距離は空いているものの、しっかりとした話し方だった。その時戻ってきた爆豪らは今の光景に目を見開く。
『さ、先程は、急に泣き出したりして、ご、ごめんなさい。は、話しかけてくれて、ありがと、ございま＿＿』
目が合うことはなかったけれど、でも、その言葉を聞いていた者らはちゃんと伝わった。一度みんなで目を合わせると二パッと大きく笑みを浮かべる。
「いーんすよ！！むしろ俺らの方がごめんなさい！！」
「あの、お名前聞いても良いんかな…？」
「ずっと思ってたけどちょー可愛いっすねぇ！」
人が良すぎる者らにAはほっと息をついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 998人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かしわ(プロフ) - 名無し84302号さん» 拝読ありがとうございます。何回も読んでくださってるなんて嬉しいです😭書きたい話も沢山ありますので、まだまだ頑張りまあああああああああすっ！！！！！(狂) (2023年1月13日 0時) (
レス) @page49 id: 3fcb1b6071 (このIDを非表示/違反報告)
名無し84302号(プロフ) - 素敵な小説を作って下さりありがとうございます！もう、好み過ぎて何回も読ませて頂いております！体調に気をつけて更新頑張って下さい( ´ ▽ ` ) (2023年1月11日 22時) (レス) @page48 id: 81c0b10d37 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - 虹彩さん» ｩ"ﾜｧｧ!!!気づいて下さった方がいた！嬉しいです！あ、拝読ありがとうございます。ここねぇ、とってもお気に入りなんです。3人の愛が見えますよね。 (2023年1月8日 15時) (レス) @page44 id: 3fcb1b6071 (このIDを非表示/違反報告)
虹彩(プロフ) - 最後の「いなくならないでね」「〇〇ちゃんこそ」の部分がヒロアカのED「sketch」の歌詞になぞらえているのかなぁと感じてすごく胸に響きました。これからも投稿お待ちしています。 この作品のいちファンより (2023年1月8日 1時) (レス) @page44 id: 7d88959bdf (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - かしわさん» 何それめちゃくちゃ好みです！！！！ (2023年1月3日 21時) (レス) id: a3f5eb2b55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かしわ | 作成日時：2022年12月4日 19時
