第28話 ページ28
その少し前。
爆豪はクラスメイトに呼ばれて共有スペースに降りてきた。壊理が来ている、と。
それで窓から外を覗けば、Aが泣きながら何か言っていて、緑谷がそれを抑えている様子が窺えた。ただ事ではない。緑谷が爆豪を呼んだ理由もきっとそれだ。
大方事情を知らないクラスメイトがAとの距離を詰めてパニックを起こしてしまったんだろう。
無意識に傍へ寄ろうと玄関の扉を開け、少し歩調を早めると、通形に止められている壊理の姿が目に入った。
「壊理ちゃん、俺達はここで2人を待っていよう。ね？」
「でも…お姉ちゃん、私のせいで泣いて____」
「違ぇわ」
よく自分を責めてしまうのは、壊理もAも一緒だ。爆豪はそれが嫌いだった。だって、全てが1人の責任になるなんてこと、あるわけないのだ。人間の思い込みというだけ。
爆豪はつい、壊理の言葉に被せるように否定してしまった。外からの声に壊理はきょとんと顔を上げる。
怖い顔の人。あれ、でも、どこかで見たことがあるような気がする。何時だったか、Aが言っていた。
「かっ…ば、ばくご、さん」
Aはよく幼馴染のかっこいい2人の話をしてくれた。1人は緑谷だと最近分かったのだが、もう一人が誰だか、ずっと分からなかった。
そこで、以前見せてくれた写真を思い出して。Aの｢かっちゃん｣という呼び方が思い浮かんで。そうだ、確か爆豪勝己といった。
爆豪は壊理に名前を知られていることに一瞬目を見開いたが、直ぐにAの影響だと察する。
そして目線を合わせるように屈んだ。
「…すぐ自分のせいにすんなや」
「ぇ、で、でも、お姉ちゃんにわがまま言ったのは、」
「アイツらに対人恐怖症を伝えてなかった俺らの落ち度だ。アンタは何も悪くねぇンだよ。アンタは賢いからわかるよな？」
普段の彼からは想像できないほど優しい声だった。暴言の一つや二つ吐かれると思っていた通形は虚をつかれてしまう。子供の世話だってやろうと思えばできるのだ。
それに何より、壊理はAによく似てるから。
大事にしなくちゃいけない、と。そう、本能的に思うのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 998人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かしわ(プロフ) - 名無し84302号さん» 拝読ありがとうございます。何回も読んでくださってるなんて嬉しいです😭書きたい話も沢山ありますので、まだまだ頑張りまあああああああああすっ！！！！！(狂) (2023年1月13日 0時) (
レス) @page49 id: 3fcb1b6071 (このIDを非表示/違反報告)
名無し84302号(プロフ) - 素敵な小説を作って下さりありがとうございます！もう、好み過ぎて何回も読ませて頂いております！体調に気をつけて更新頑張って下さい( ´ ▽ ` ) (2023年1月11日 22時) (レス) @page48 id: 81c0b10d37 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - 虹彩さん» ｩ"ﾜｧｧ!!!気づいて下さった方がいた！嬉しいです！あ、拝読ありがとうございます。ここねぇ、とってもお気に入りなんです。3人の愛が見えますよね。 (2023年1月8日 15時) (レス) @page44 id: 3fcb1b6071 (このIDを非表示/違反報告)
虹彩(プロフ) - 最後の「いなくならないでね」「〇〇ちゃんこそ」の部分がヒロアカのED「sketch」の歌詞になぞらえているのかなぁと感じてすごく胸に響きました。これからも投稿お待ちしています。 この作品のいちファンより (2023年1月8日 1時) (レス) @page44 id: 7d88959bdf (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - かしわさん» 何それめちゃくちゃ好みです！！！！ (2023年1月3日 21時) (レス) id: a3f5eb2b55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かしわ | 作成日時：2022年12月4日 19時
