105音 ページ9
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稜雅side_____
今日のご飯はAが好きなおでん。
その準備をしているとAから
「今日、遅くなる」と連絡がきた。
2日連続……まさか…拓弥か…と思って
連絡を返す。
やっぱり拓弥。しかも拓弥の家。
拓弥の家なんか行ったら
あの事を思い出してしまうのではないか
そう思いながらも許可をした。
今否定して変に怪しまれる方が困る。
そう思ったからだ。
淡々とおでんを煮込む。
だけど気になって火を止め俺は家を出た。
何かあったらすぐ駆けこめるように
拓弥の家の近くの電柱に体を預けて。
あれから何時間経っただろう。
全然大きな物音ひとつない。
熱でおかしくなって言ってないだろうか。
1人でずっと考えていると数時間経って
拓弥の家の玄関が開いた。
中から出てきたのはAと拓弥。
朝、俺は拓弥の家に寄ってから
学校に行ったんだけどその時より
随分顔色が良い。
…きっとAが看病したんだろう。
拓弥は家に入ったのに
ずっと拓弥の家を眺めるA
何か考えているようなそんな深刻な顔。
次に発した言葉にドキッとする。
「そんなわけない」そうAは言った。
何に対して言ったのかは分からないけど
拓弥の家に行って、何か昔のことを
思い出したのではないか。
そう思うとドキドキして
Aにすぐ声をかける。
Aの手を無理矢理引く。
早くここから離したくて。
そしたら急に後ろから抱きついてくるA
びっくりして変な声が出る。
「私のこと大好きだよね」
そう言って笑うAに胸が痛くなる。
大好きだよ、妹として。
だから傷付けたくないんだ…。
「お兄ちゃんのおでんが好き」
知ってる。全部お前のことは知ってる。
傷付けずにお前のことを守って生きてきた。
なのに次に発した言葉は
Aを傷付ける言葉で。
少し動揺したAの目を見て
「やってしまった」と後悔する。
「なんで…」と言うAの泣き顔を見て
思わずぎゅっと抱きしめた……のに
突き飛ばされた。
『そんなこと言うお兄ちゃんなんか大っ嫌い』
そう言って走るAを
追いかけなくちゃいけないのに追いかけれない。
その態度を見て、言わなくちゃいけない。
もうあの歳なんだ、きっと分かってくれる。
今日は嫌いな満月だ。
だけど今日が良いタイミングなんじゃないか。
Aに”あのこと”を話す。
そう決意した。
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作者名:凛桜 | 作成日時:2019年1月31日 17時