渋谷さんの妹はJ事務所の女の子でした (ページ5)

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「すいません、Aメロからお願いします」

スタッフさんは何回も繰り返される私の言葉に

嫌な顔１つしないで「分かりました」と言ってAメロを流してくれる。

ぎゅ、とマイクを持つ手に力が入って

頑張って頑張って歌うけど

やっぱり納得が出来なかった。

涙を溜めて、

アリーナの天井を見上げてれば

神山「Aちゃん」

「…神山さん」

神山「なんなんその呼び方(笑)」

神ちゃんが優しく私の頭を撫でて

引っ込んだはずの涙が、また出そうになった。

神山「昼飯食べへんの？」

「…んー」

いいや、と言おうとした時

お腹の音が鳴って。

神山「ほら、行くで」

神ちゃんが手を出すから、

私はその手は握らず

思いっきり背中に飛び乗った。

神山「わ、」

「…神ちゃん」

神山「んー？」

ゆらゆら揺れながら、神ちゃんは私を担いで歩き出す。

「…さっきの歌、上手かった？」

神山「…A」

「ごめん、何でもな「上手かったで」

私の声に被らせて言った神ちゃんは、嘘をついてるようには見えなかった。

神山「Aが思ってるより、ずっと」

ああ、本当に私は…

ぎゅ、と力を込めたのは

泣いてるのを、見られたくなかったから。

神山(泣き虫なんは、変わらへんね)