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しばらく歩くと奥の方で聞き覚えのある声がした。

目をやるとAとあの男がいた。
タイミング最悪だ

そう思ったが何やら二人の雰囲気は怪しく、男はAの腕を掴み、Aはそれを嫌がって振り払おうとしているようだ。


「ちょっと、Aが嫌がってるじゃ無いですか。」


思わず出てきてしまった。
男の手をAの腕から引き剥がす事は成功したものの、Aの腕には赤く跡が残ってしまっている。



男は舌打ちをするとその場から走り去った。


「おい、大丈夫か。」

「大丈夫。」

Aは口では大丈夫と言うものの体は震えている。
辺りを見渡せば、いわゆるホテル街。


まぁ、そういう事をされそうになったのだろう。

本当にこいつは目が離せない。心配になる。本当は俺が守ってやりたい。
でも詐欺とか酷い目に会う前に助けれてよかった。

色々な感情がぐるぐる渦巻く。

「あの人、結婚を前提にお付き合いしてくれて、色々良くしてくれたんだけど、急に怖くなって……。」

Aはゆっくり話はじめた。

「ごめん、迷惑かけて。せっかく相手は選べって忠告してくれてたのに。」


私って本当にダメだよね。Aはそう言って
わかりやすく落ち込んでいる。

本当は慰め言葉をかけるのが正解なのだろう。
だが今の俺にはそんな事はできない。


「お前ってほんっとに見る目無いよな!」

感情任せに想いを言葉に乗せる。

「俺じゃ……、俺じゃあダメなのかよ。」

酔った勢いで言葉がポロポロでる。

「俺だったらこんな目に合わせない。Aを誰よりも大事にする。」


こんな状況で告白するのは良くないというのは
わかっている。

酔っているというのもあるし弱った相手にこんな身勝手な告白して、困らせてしまう。

でもそれは重々承知だ。

やっぱり諦められないのだ。


「本当に私でいいの?」

「お前がいい。」


彼女の答えは自信のないものだった。
けれどそれは確かにYESの返事だ。


俺はAに触れるだけのキスをした。


その瞬間やっとAを自分のものにできた、そう感じた。


あぁ、もっと早く伝えていればよかった。


今までの負の感情を払拭するかのように幸福で胸がいっぱいになる。



「お酒くさい。」

「わりぃ。」


頭の中はまだふわふわしている。
ホテル街のネオンもボヤけて見える。


「ねぇ、酔いすぎだよ。危ないから手繋いで帰ろ。」


優しく腕を引かれる、ホテル街を抜け出し二人で帰路に着いた。

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作者名:ちゃそ | 作成日時:2022年5月29日 1時

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