【短編集】アルバム【gnki】 (ページ16)

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「で、あの男誰なんだよ。」

不機嫌そうに彼は言う。
恋人ができないと嘆いていた私がぐちつぼより先に恋人を作った事を妬んでいるのだろうか。

「あの人は、結婚を前提にお付き合いしてる人。
優しい人だよ。」

共通の知人という訳でもないので適当に話す。

というかこの地獄みたいな空気を早く終わらせたい。

仕事終わりの帰り道、私たちは最寄りの駅が一緒という事もありよく一緒に帰っていた。

だけど、こんな空気になるのは初めてだ。

「ふーん。」

ぐちつぼはそれ以上探索はしてこなかった。

でもそれは私にとって都合良かった。

その相手とは、なんとなく入れた出会い系アプリで知り合って、会ってすぐお付き合いし始めたからだ。

私もこの歳で結婚に焦っていた事もあり、相手からの告白に二つ返事で了承してしまった。

けれどもちろんノリで付き合った訳ではない。
数回会ってみて彼は優しい人だという事も理解した。

まぁ、お金持ちすぎて自分と金銭感覚がズレているのは
マイナス点だが、それもそのうちなんとかなるだろうと楽観的に考えていた。

その後レストランで食事している姿をぐちつぼに見られるとは思っても見なかったけど。

何故かぐちつぼにはばれたく無いというか、恋人ができたことを隠していたかった。

まさかね、と芽生えた想いにに気づく前に心に蓋をした。

「お前がどんな人と付き合っても、結婚しても知ったこっちゃない。」

ぐちつぼは私の顔を見ないで話し始める。
表情はよく見えない。

「けど、お前の事良く思って見てくれてるやつはいっぱい居る。だから、お前が納得いく相手を選べよ。」

ぶっきらぼうだけど優しい言葉。
言い方は遠回しだけど、心配してくれてるのだろう。

「ありがとう、大丈夫だよ。自分の相手くらい自分で見つけるよ。」

そう伝えて私たちは駅に向かった。