とびきりの愛をキミに【怪盗ジョーカー】【短編集】 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:840 hit

ジョーカーページ1

ｼﾞｮ「なぁ、A？今日は俺に何か渡すモンがあんじゃねーの？」
リビングでソファに座っている彼──ジョーカーはチラチラとAを見ながらそう言った。
彼女は初めはなんの事かわからないような顔をしていたが何となく察したのだろう、部屋からお洒落な包装紙に包まれた小箱を持ってきた。
貴「バレンタインでしょ？わかってるよ、はい。これ、私の気持ち」
ｼﾞｮ「中身は何かな〜！」
彼は目を爛々と輝かせながら小箱を開けた。
しかし小箱を開けた途端、その表情は一転、青ざめていった。
ｼﾞｮ「はぁぁぁ！？！？お、お前、俺の事がそんなに嫌いなのかよ！？」
箱の中には柔らかな純白──マシュマロが詰め込まれていた。
バレンタインデーの贈り物としてそれが贈られると「嫌い」という意味になるらしい。
貴「あははっ！！残念だったわね！また来年頑張ってみたら？」
そう言い残すと彼女は自分の部屋へと踵を返して行った。
先程までは強気だった彼女の横顔はどこか寂しそうだった。
薄暗い自分の部屋に逃げるように帰ってきたAの目尻にはうっすらと涙が溜まっていた。
貴「自分の気持ち…ちゃんと伝えられなかった…なんであんな事言っちゃったんだろ…」
涙で頬が濡れてしまったのを隠す様にAは枕に顔を埋めた。
しばらくして。リビングで小箱の中に収まっているマシュマロとにらめっこをしていたジョーカーはため息を1つついた。
ｼﾞｮ「まぁせっかく貰ったモンだし食べるか…」
ぽつり、と自分に言い聞かせるように独り言を呟きながらマシュマロに手を伸ばした瞬間、マシュマロと小箱がプゥ〜っと音を立てながら膨らみ始めた。
ｼﾞｮ「は！？イメージガム！？」
驚いている間にもどんどん小箱は膨らんでいき───…パンッと割れた。
ジョーカーが恐る恐る目を開けるとマシュマロが詰まった小箱が収まっていたはずの手のひらにまた新しいお洒落な小箱が収まっていた。
なんなんだ、そう思いながら小箱を開けると中にはカラフルなマカロンが入っていた。
バレンタインデーに贈られるマカロンの意味は「あなたは特別な人」。
マカロンを1つ摘み、口へ運ぶ。
口の中にふんわりと優しい甘さが広がっていく。
彼女がとても愛おしくなりいても立ってもいられなくなった彼はAが居る部屋へ駆け出して行った。