北上中学校と坂の謎

北上坂 ページ5

放課後になり、まっすぐに家に帰った秋。

けど、秋はまだみんなが話していたことを気にしていたのだ。

――もし、私が調べに行って、嘘だって証明できたなら。

少なくとも、クラスの皆の不安は取り除かれる。

普段は存在感がなかったけれど、こういうところで秋は活躍してきた。

だから、今回も決して例外ではなかった。

クラスメイトに、北上坂はどこかを尋ねておいた。



『何で？行くつもりなの？』

『違う。親戚の家の付近だから』

『北上中学校を五百メートルほど東に行ったところだよ』

その付近の坂がそれだと言う。付近にボロ屋敷があるとも聞いた。

夜になっても、母に理由を話せば出かけることができる。適当なことを言って出てこよう。

当たり前の習慣。母は何も知らないから、簡単に許可をくれるだろう。



夜になった。

その日の午後は、雨が降っていたため、霧によって視界が悪くなっていた。

けれど、私は北上坂に行って調査をしなければいけない。

……本当はいつだっていいんだけど、早い方が楽なんだ。

「ちょっと本屋さんに行ってくるね」

近くに本屋があり、最近ほしいと言っていた本を買うという理由も含めて言う。

「行ってらっしゃい。遅いんだから気を付けてね」

今どき珍しいと思う。妹は、祖母の家に泊まりに行っているから今はいない。

お父さんは出張。あと数週間は顔を合わせないんじゃないかな。

(ちなみに、秋は知らないが、父は明日帰ってくることになっているのだ。)

門限などない我が家だけど、心配かけたくないから声だけはかけていく。



少し歩いて、本屋さんで気になっていた本を探す。

「えっと……『霧野孝多の冒険』……どこだろう」

好みがわかれる本だけど、私は個人的に好きなストーリーだと思ったんだよね。

霧野孝多が、街で起きる奇怪な事件をめぐる冒険ファンタジー。

途中で怖い部分もあるって、クラスメイトは言っていたような。

最近仕入れた本のコーナーにあったから、すぐに見つけてレジに向かう。



本屋から百メートルほど歩いたところが北上坂だった。

霧が濃いという事もあるけど、見通しが悪い。

元々、曲線状になっている坂だ。霧がなくても通るのには苦労する。

「……」

一応、生徒が消えたというので探そうと思い、ボロ屋敷を探した。

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