10話 ページ10
…(kyungsoo's side)
手を回した彼女の衣服はきんと冷えきっている。
彼女が冷えるのは嫌だ。
指先も、耳も鼻の頭も
あたたかいきみでいて欲しい。
「手。」
ぱちりと一度、疑問を表すように瞬きをすると
彼女はそっと指先が赤くなった両手を差し出した。
駄目だよ、こんなに冷えちゃ。
そっとその冷たい手を引いて
口元に寄せて息を吐きかける。
ぴくりと跳ねたのが手のひらの振動で伝わる。
ぎゅっと握るとほんの少しだけ鼓動が分かった。
「俺と手の肌が違う。柔らかさも、薄さも。」
「ギョンス君の手は、大きいですね。」
ふたりで、指の形や爪の表面、関節の骨を
触ってよく観察し合う。
静かに、丁寧に。
それが済んだら次の部位、
次の組織、
次の細部を。
「Aの手首、なんか壊れそう。」
「ギョンス君の腕、かたいけどしなやか。」
「Aの鎖骨、陶器みたい。」
「実は私、ギョンス君の輪郭とってもいいと思ってました。」
「俺はAの頬骨がいいと思ってたよ。」
ゆっくりじっくり確かめて。
静かに感想を述べ合う。
部屋には月明かりが差し込んで
密かに僕らの素肌を照らしている。
「ねぇ、瞼触っていい？」
どうぞ、とそっと目を瞑ったA。
その顔のあどけなさと美しさに、
俺のさっきまでの純粋な好奇心は消え去った。
研究に用いていた道具は
指から唇に変わり、
研究対象は
瞼から唇に変わった。
ちゅ。
外では風が強くなったみたいで
視界の端で湖のほとりの大木の先の葉が
ちらちらと揺れてる。
さっきの恋人たちはどうなっただろう。
そして
不真面目な研究員の俺に
彼女はそっと今瞼を開ける。
…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 349人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ドギョンスラブ！(プロフ) - すごくこのお話好きです！更新お待ちしております！！ (2019年3月3日 15時) (
レス) id: ccfad543f3 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - miiitaoさん» なるほど、確かに分かりづらかったですね！ご指摘ありがとうございます。この小説はカイくんのミステリアスな感じを出すためにカイくんsideは書いてないんです。ちゃんと書き直しておきますね！コメントありがとうございました。 (2017年12月16日 0時) (レス) id: 269a1e3e75 (このIDを非表示/違反報告)
miiitao(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいです。話の作りがとても上手でどんどん読みたくなるところがすごいなと思っています。私だけなのかもしれないのですが…ギョンスsideかカイsideなのかわからなくなる時があります。him sideではなく◯◯sideと書いて頂ければ嬉しいです。 (2017年12月15日 1時) (レス) id: 8d214eb085 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - 羅夢さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます！全部読んでくださってるなんて感動です！これからも更新頑張らせていただきますね！ (2017年12月6日 6時) (レス) id: 269a1e3e75 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢 - 描写が細かくてどきどきしながら読んでます！短編集から全部読んでます〜！素敵な小説が読めて嬉しいです！！！ (2017年12月5日 13時) (レス) id: 87c24bbb37 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すずめ | 作成日時：2017年11月30日 1時
