月が綺麗ですね。 S.S ［完結］

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中学生になってから、一緒には帰らなくなったけど、たまにこの公園に寄って、ベンチに座って駄弁る。


この時間が好き。


2人しかいないし、デート帰りみたいと錯覚できるから。


翔｢話変わるけど、｣


｢ん？｣


さっきまで楽しく話していた雰囲気が少し変わったような気がした。


翔｢お前、中山に告られてたよな｣


｢あ、うん。なんで知ってるの？｣


何もやましいことはしてないけど、少し焦る。


翔｢俺も屋上行ったんだよ｣


｢あ、そうだったんだ。｣


翔ちゃんには見られたくなかったな……


翔｢なんて返事したの｣


｢ごめんなさいって。｣


翔｢は、｣

翔｢なんで｣


｢なんでって、恋愛的に好きな訳じゃから｣


翔｢え、Aの好きな人って中山じゃねぇの……？｣


｢違うよ。笑 なんでそんなこと思ってたの笑｣


翔ちゃんだなんて口が裂けても言えない。なんでって発言で、自分が対象ではないってことが分かったし。


翔｢だってお前ら、委員会一緒で仲良いし、｣


｢ただ仲良いだけ。申し訳ないけど、私は友達としてしか見てなかった｣


翔｢じゃあ、｣


｢ん？｣


翔｢いや、なんでもねえ。｣


流れる沈黙。

何話せばいいんだろ。

いつも少しでも長く居たいと、常に話に困らないようにアンテナを張っているが、今は全く話題が出てこない。

少し困って、頭をフル回転させていると、いきなり右手に温もりが訪れた。


｢え、？｣


翔ちゃんの左手が繋がれている。


翔｢今日さ、現代文で夏目漱石やったじゃん。｣


左手を気にせず、話始める翔ちゃん


｢う、ん｣


翔｢あの話聞いてた？｣


｢聞いてたよ。｣


翔｢……月が綺麗だな。｣


｢、え、？｣


空には夕月。



翔ちゃんが壊してくれた壁を私も一緒に壊す。

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