第十九話 ページ21
私は目を見開いて数秒硬直してしまった。
この人・・・気がついていたとは。だいぶ鋭いな。
どうにか頑張って笑顔を作っていたつもりでいたが、どうやらトールには通用しないらしかった。
「あはは。まさかバレちゃうなんて思いませんでした。すごいですね、トールさん」
私はそれでもなお笑顔を作り続け、トールに微笑む。
そうでもしないと今すぐにでも泣きそうだったから。
でもトールは、私が笑えば笑うほど眉間にシワがよっていく。
その怒ったような顔で、トールは私に言った。
「稲野、隠しても無駄だ。俺にはわかる」
そう言ってトールは私の手を掴む。
そして有無を言わせないような迫力で私をじっと見つめてきた。
「俺に話してみろ。相談くらいなら、乗ってやる」
「トールさん・・・」
そう言ってくるトールの瞳はとても真剣で、尚且つ優しげだった。
「そんな顔をされると、見ているこっちまで悲しくなるだろう。頼むから笑ってくれ」
トールは小さく苦笑を漏らす。
そんなトールをみて、私も少し笑顔になった。作り笑顔ではなく、本当の。
そして私が笑顔になったのをみて、トールは嬉しそうにしていた。
あまりそういうのを表情には出さないタイプみたいだけど、嬉しそうなのは伝わってくる。
そんな彼の変化から、彼が私を心配してくれていたのだとわかってとても嬉しくなった。
まだ今日会ったばかりで、深いつながりも特にないのに、トールは本当に優しい人だと思う。
彼だけはほかの神と比べてだいぶマシ。だなんて思っていただけど、マシだなんてものではなかったようだ。
トールと共にいると、言葉、行動、その一つ一つを感じるだけで、不思議と心が温まる。そんな人だ。
「ありがとう・・・ございます・・・」
私が涙混じりにお礼を言うと、トールは「ああ・・・」とだけ言って、あの大きくて男らしい手で私の頭を撫でてくれた。
その優しい手つきに、ぽかぽかと身も心も温まる。
「落ち着くまでまってやるから・・・落ち着いたら、話せ」
トールのその言葉に、こらえていた涙が一気に腺を切って溢れ出した。
訳も分からず涙がぼろぼろと零れ、頬を熱いものが伝う。
それでもなおずっと泣き続けた。
トールはそんな私をそっと抱きしめて、優しい手つきで頭を撫でてくれる。
私はそんなトールの胸に顔をうずめて、しばらく泣き続けていた。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まゆ - 面白かったです(≧∀≦)続きが、すごく気になります(≧∀≦)これからも、頑張って下さい(≧∀≦) (2018年6月30日 0時) (
レス) id: 139ce4a76e (このIDを非表示/違反報告)
イスフィーユ - 早く続きが見たいです。更新頑張って下さい！ (2014年7月29日 2時) (レス) id: 7ae3fa9c4c (このIDを非表示/違反報告)
みら(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます！がんばりますねー！ (2014年7月17日 16時) (レス) id: c6cac86b84 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - 続きが気になります！更新頑張ってください！ (2014年7月14日 23時) (レス) id: c42e404346 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきちゃん(プロフ) - 面白〜〜〜い、ロキちゃん可愛い(前から可愛いなと思っていたから、ちゃんずけしています) (2014年6月16日 23時) (レス) id: 13c6deeea9 (このIDを非表示/違反報告)
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