G線上のアリア ページ7
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「…宮治は、宮侑のことは好きなの？」
少しの沈黙の後、林檎から宮治に話題を振った。
「んー、好きかって言われたらあんま好きやないなあ」
「そうなんだ、兄弟とかってみんな相手のことが好きなんだと思ってた」
「まあ、歳が少しでも離れとったら好いとったかもしれんな」
俺らは双子やからな と宮治は少し険しい顔が隠せていない笑顔をしていた。
「…双子ってな、比べられんねん」
何かを思ったのか、俯いたままの宮治は淡々と話し始めた。
「俺ら小さい時からバレーやっとってさ、最初は俺のが才能あって上手くてな。俺が最初に褒められてツムは次に褒められてって感じやったわ。
でもあいつは、俺よりバレーへの愛が強くて、周りに嫌われるのとか構いっ子無しでずっと練習しとったんよ。
そしたら段々俺に追いついて来て、俺より上手くなって、今は高校ナンバーワンセッターって言われて。
ずっと俺のが上だったから、急に下になんのが怖なって」
宮治はそこまで言って、何に対してか分からない嘲笑をした。
「…宮治は別に」
「あー、何も言わんといてや。この悩みで他人に言われたことに納得したら、俺が俺の事哀しく思うだけや」
後頭部を右手で掻きながら宮治は寂しそうに言葉を放った。
林檎はそんな宮治に対して何も言わずに…いや、言えずにただ救急バックを整理しているだけだった。
「そんじゃ、ありがとうな」
消毒をした部分を指で刺してお礼をした宮治は、走ってグラウンドへ向かった。
一人保健室に残された林檎は、先程まで止まることなく動いていた手を止め、口をパクパクと動かしていた。
「……兄弟って複雑」
林檎は口を動かしてようやく出た言葉をボソリとつぶやき、一人でいること空間に残した。
眼帯をしている右目を指で触っては瞳を揺らし、救急バックを定位置に戻して急ぐようにグラウンドへ向かった。
．
続く
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作者名：川畑。 | 作成日時：2023年9月10日 13時
