ラ・カンパネラ ページ3
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「…思わないけど」
飴屋の問いに対し、林檎は窓の外を眺めながら返答した。
「嘘ですよ、絶対思ってます。私はいつも人並み以下を歩いているんですよ。
容姿も性格も勉強も運動もコミュ力も…全部、全部」
林檎の言葉が気に食わなかったのか、飴屋は肩を震わせながら先程よりも声量を上げ問いかける。
飴屋はタガが外れたのか、急に饒舌になり不満を嘆いていった。
「私がこんなんだから、周りに舐められていじめられるんです。
小中でいじめがあって、過去の自分を知ってる人が誰もいないように、遠くてもここまで来たのに……ここでもいじめられちゃ意味ないです」
一通り愚痴をこぼした飴屋は俯きながらも林檎をチラリと見た。
林檎は飴屋の言葉にピクリとも反応せず、飴屋の方すら見ずに窓の外を眺めていた。
初めてこんなに必死になって本音をこぼしたのに…拳を強く握る飴屋の目には涙が浮かんでいた。
「……飴屋さんは、自分のことをなんだと思っているの？」
「…え」
まるで話を聞いていなかった素振りを見せた林檎は、窓の外から目線を外さずに飴屋に問いかけた。
「何って…そんなのゴミです。他人の劣化物、白い目で見られて仕方がないと…」
「飴屋さんは人間だよ、それ以外のなんでもない。
…正真正銘の人間」
そう言った林檎は、飴屋の涙で揺らぐ瞳をじっと見つめた。
「私はいじめにあった事が無いから偉そうには言えないけど、飴屋さんがいじめられていい理由なんてどこにも無いよ。
私は時々思う事があるんだけど、人は誰でも平等であるべきなのに、なんで人は全てに優劣をつけたがるんだろうって。例え優れていても劣っていても、それはその人の個性なのに。」
頬を濡らす飴屋を他所に、林檎は喋り続けた。
「世の中には差別しないとか、個性を尊重とかそんなありきたりな言葉を何も考えずに発する人々がいて、十人十色なんて四字熟語もあるけど、そんなのは偽善に過ぎない。
そういう言葉が無くならない限り、人間がみんな誰かのクローン出できていない限り、いじめも差別も無くならない。」
林檎は小さな溜息を吐いて席を立ち、飴屋が持っていた箒を取り上げた。
「山西さんとも野村さんとも、春になれば関係を持たなくなる。偶然同じ学校に入って、偶然同じクラスになっただけの人たちに、何故飴屋さんがいじめられなきゃいけないの。何故飴屋さんがそれで苦しまなきゃいけないの」
飴屋の目に溜まった涙は、ゆっくりと頬を伝った。
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作者名：川畑。 | 作成日時：2023年9月10日 13時
